「超多忙な人気醸造家がついに初来日」と聞いて1ヶ月前から、仕事の予定も変えて楽しみにしておりました。ハンドレッド・エーカーの醸造を手がけた人物ということで興味を持って以降、そのワインの品質に驚かされてきた、その人気醸造家のプライベートブランド「リヴァース・マリー」。

たまには、結論から書いてしまいましょう。これだけ素晴らしいワインを、複数、見事に造り分けられる人は、世界中見回してもそれほどいないでしょう。お会いした中では、中伊のルカ・ダットーマ、仏ブルゴーニュのベルトラン・シュヴィヨン、西テルモ・ロドリゲス、独ローマン・ニエヴォトニツァンスキー、墺マルクス・フーバー各氏らと並んで、何を飲んでもおいしいと思える天才醸造家、トーマス・リヴァース・ブラウン氏。

現在までに1人でパーカーポイント(ワイン・アドヴォケイト)100点を20回獲得するなど、不動の地位を得ています。現在も40のワイナリーのコンサルティングを行っている上に、新規以来が殺到中の「売れっ子」、わずか45歳にして頂点を極めたといっていいほどの名声を誇っています。
しかし来日した彼は、これだけの評価を得ている大人物とは思えないほど、純朴そのものの人柄で驚きました。彼はカベルネ・ソーヴィニヨンの醸造において卓越しているとされていますが、彼自身が自分のワイナリーで2002年、まず出掛けたかったのはピノ・ノワール。現在はカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネも仕込んでいます。

 

ワイナリー名の由来としては、自身と奥さんのミドルネーム、トーマスとマリーをつなげ合わせたものです。補糖補酸一切行いません。ピノ・ノワールは今回テイスティングで饗された6種類をリリース。天然酵母を使い樽熟成10ヶ月、瓶熟5ヶ月というところも大きな差はなく、新樽率は畑によって15パーセントから30パーセントまでと使い分けるそうです。(オールドヴァインのみ100%。)他には除梗率がわずかに違う程度です。それ以外には、畑ごとの醸造の仕方もそれほど大きく変わらないそうです。収穫は樹齢によって、若い樹から古木まで順に摘んでいくそうです。

これだけの素晴らしいワインを造れるということに対して、素朴な疑問がありました。目指している、モデルとしての他のワイン、生産者、又は師とする醸造家がいるのかという事でした。トーマスさんは「特に人物としてはいない、カリフォルニア、ブルゴーニュのもの含めあらゆるワインを口にして、そこから自分で分析している。」ということでした。ウィリアム・セリエムにを飲む機会が多いということでしたので、旨みの出し方など共通点があるという意味で、その点も納得ができました。

 

6種類は、トーマス・ブラウン氏の意向により、色が明るく、アルコールの低いものから、暗く、重いものへと順に試していきます。数キロ圏内の畑の違いですが、色にはグラデーションの色分けが見事にあり、アルコールも一番上と下で2度もあります。(以下2013VT、⑥のみ2014)

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①スーマ・ヴィンヤード・オールドヴァイン(②と同じ畑で40年弱の古木):あんず、イチゴジャム、バラのような、澄んで伸びやかな香り。酸と旨みがくっついた、少しスパイスの感じもする、熟したフルーツのタッチ。オレンジの他、グレープフルーツのようなノート(香味)もあります。土のニュアンス、力強さがあり、軽やかながらも複雑という、あらゆる面を併せ持った、不思議な出来の一本。
②スーマ・ヴィンヤード:トーマス氏のプロジェクトにとって、なくてはならない存在の畑、いわゆるフラッグシップ。他のカリフォルニアの地域には見られない、オレンジのトーンが唯一出る地域だそうです。私も以前、最初に飲んだ時もこのオレンジの風味を感じ、熟成しているワインなのかと驚きました。いわゆる赤ワインというよりも白ワインぽいタッチが出るようです。全体にとろみ、まろやかさが出て、比較的シンプルな果実味。チャーミングで飲み心地の良いワインですが軽やかながら、鮮やかな香味が余韻に続きます。

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上:スーマ・ヴィンヤードの写真。元々、樹の間隔が広かった為、14年前に若い方の樹を足した、故に交互に樹齢の違う樹が植わっているそう。

③ソノマ・コースト:このワインのみ、リドル・ランチという畑を主体としつつも、各畑のブレンド。たっぷりとして赤い果実のジャム、アンズ他熟した黄~オレンジの果実のアロマ。①同様こちらも力強さを感じます。他の地域のワインに例えますと、バローロやブルゴーニュのヴォルネイ、ポマールといったワインの様な、肉付きの良さを感じます。酸が活き活き、はつらつとし、丸く外向的な果実味が複雑に合わさっています。バランス、口当たりの良いワインといえます。

④オキシデンタル・リッジ・ヴィンヤード:一気に色合いが暗く黒くなります。細やかな白い胡椒のようなタッチ、ベリージャムの様な甘み、プラムのような酸や旨みがあります。彼の説明ではペニー・ロイヤル・ミントが畑の周りにカヴァー・クロップ(緩衝草)として入っているので、その風味も少しするということでした。試飲時、個人的にはほとんどそれは感じませんでしたが、時間が経つと、いわれてみればという程度に、青いハーヴ香もとらえられます。

後半へ続く

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