かつて、インポーターMONACAさんの試飲会で、染み入るような美味さに心を掴まれた、北イタリア・アルトアディジェ州のサンパウルス社のワイン。あれから1年半、輸出部長のお話が聞けるセミナー開催のお話をに伺い、楽しみにしていました。

 

2月22日に行われたセミナー。アルト・アディジェというと州全体でもブドウの生産量はイタリアの全生産量の1パーセント前後と非常に少ないのですが、ガンベロ・ロッソ誌における最高評価トレ・ビッキエーリの獲得数は20州中3位というプレミアムワインの産地です。特に白ワインの銘産地として知られています。

この地は標高が高く、昼夜の寒暖さが大きい所。同社は中規模の共同組合形態の生産者で、約200軒ほどが参加をしています。一般的に協同組合というと、安かろう不味かろう、のイメージがつきますが、南仏ラングドックやこの地域は例外とされる事情があります。山地の畑は細分化され、一つ一つが小さく、それぞれが別の小規模栽培者によって所有されています。ですから共同組合という形でも品質の高いワインを造るという図式が成り立つのです。その中でも110年の歴史を持つ同社は、現在必須の醸造方として世界中で取り入れられている、グラビティシステム(重力に逆らわず、原料を地下に地下にと落とす方法。ポンプを用いない。)を創業当初から採用し、選ばれた白ぶどうで、品種別のワインを造っています。その徹底ぶりは一軒の栽培農家から最も優れた一品種しか買い取らないと決まっているほどです。

かつてはこの地域のワインは、(イタリアの北端でドイツ語圏ということもあり)イタリア半島の中心地よりは、より北のオーストリア、ドイツ、スイスなどに売られていた時期が長く、この30年ほどで注目をされてきた地域といえます。

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試飲したワイン、まずは「ミュラー・トゥルガウ 2015」。この品種は主にドイツで栽培をされている品種ですが、北イタリアのこの地でもごくわずかに栽培されている、交配品種(人為的に掛け合わせて出来た品種)です。過去の仕事柄、ドイツのミュラー・トゥルガウは多く試してきましたが、そのどれもに勝るとも劣らない出来。ミネラル、アロマに溢れ、伸びやかでいて涼やか、塩味、旨味を感じます。単体で飲むと、ほんのわずかに硬さ、苦味が後味に感じられますが、この程度であれば食中酒として、料理との相性を考えるとメリットともいえます。現地ではスペック(この地方特産の熟成ハム)、鱒などと合わせるようですが、我々の普段の食事にも合わせやすく、塩味の焼き鳥、または砂肝、軽いチーズ、エスニック料理、天ぷら、貝類との相性が特に期待できます。価格を考えると非常に良くできたワインと言えます。

もう一つの白ワイン、「ピノ・ビアンコ・パッション 2013」。パッションというシリーズは、選ばれたぶどうを用いて大樽で厚みを持たせたスタイル。年によっては造られず、栽培農家の中でも優れた葡萄を栽培するピノ・ビアンコの生産者一軒(全体の加盟者200軒中)だけの選ばれたぶどうを使用します。年によって一万三千本から四千本程度という限られたワインです。

ガンベロ・ロッソ誌のトレビッキエーリ(最高評価)も獲得したヴィンテージ2013年。最初に樽香は若干強く感じますが、味にはそれほど大きく影響せず、とろみ、厚みが感じられるスタイルです。空気に触れると後半塩味も感じられます。個人的には鶏もも肉のチーズ焼きか、クリームソースと合わせ、こなれた樽のニュアンスと合わせてみたい気がします。

 

セミナー後の試飲ではモスカート・ジャッロも試せました。「マスカット」というイメージから甘いと想像されるかもしれませんが、このワインはドライに仕立てられ、香りの華やかさ、みずみずしさだけは残り、後口まですっきりとした味わいの、他にはなかなかないタイプのワインといえます。同じアッピア地域では私も好きなコルテレンツィオ、また同州では屈指の白ワイン生産者テルラーノなど、日本でも比較的知名度のあるワイナリーが存在しますが、このワイナリーも10年前の100周年記念以降、特に輸出プロモーションに力を入れ、注目度が高まっているようです。こういう比較的小さな規模の、地方の生産者のワインが日本に紹介されるのは非常にありがたいですし、今後とも伸びしろもある生産者といえます。

 

塩味、透明感ある果実味が、じわっと、そして細かくぴちぴちと弾けるような印象のサン・パウルスの手頃な白ワインたち。春から初夏にかけて活躍の場が多くなりそうです。

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