スペイン中部、トレド県のワイナリー「フィンカ・ロス・アリハレス」のオーナーで醸造家のホセ・ルイス・ペレスさんがいらっしゃっていたので、直接お話を伺いながら試飲をする機会に恵まれました。

彼のワインは白2品種赤7品種栽培し、土着品種の他、メルロ、プティヴェルド等国際品種も含め、さまざまなキャラクターのブドウを標高の高い畑で、ほぼ同条件で栽培するという、珍しい方法をとっています。(一般的には、品種ごとに向いた畑の区画に植え分けるのが現在の主流です。)醸造は品種ごとに全く別に行い、ワインとして商品化するときにブレンドするという、一見ボルドーに近いスタイルをとっています。ただ彼のワインに、他のワイン産地における特徴や定義は当てはまりません。

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例えば一般的に白ワインのヴィオニエは、ご存知の方も多いと思いますが、トロピカルでボリュームがしっかりあり、アルコールも高くなり、どちらかというと、重口の白ワインとなる傾向があります。ただ彼の手にかかれば、涼やかで透明感があり、ミネラルも感じられ、華やかな風味がありながら、引き締まって飲み心地の良い白ワインに仕上げます。聞くと、比較的粒の小さいこのブドウを9月下旬まで待って収穫(白ブドウの平均は8月中旬から9月中旬)。標高の高さもあるので、酸、ミネラルがのります。

もう一つの白ワインはモスカテル。他産地で見かけるワインの「マスカット・オブ・アレキサンドリア」系の品種とは違うそうで、風味は甘やかながら、ドライですっきりした辛口。これも興味深い一本です。

他に彼が栽培する品種として得意としているのはグラシアノ、シラー、ガルナチャといった黒ブドウ品種。それらは全て、特にグラシアノなどは、(スペイン北東部で一部試す人がいますが)主役として単体で醸されることは他の産地、生産者ではほとんどなく、常に脇役扱いの品種とされます。しかしこれらの品種を2、 3種類又は単体で醸すことで、土地の個性に品種の個性を補完したような、優しい果実味と旨みがじわりと広がり、かつ細やかな味わいのワインが出来上がります。

試したのは「シラー・グラシアノ2015」。たった800本だけの限定生産。ヴィンテージの若さをそれほど感じさせないしなやかさ、女性的な繊細さ、丸みを感じます。

そしてもう一本が「9コタス 2013」。「コタ」というのが100mを意味するそうで、標高900mにある畑を表します。シラー45%ガルナチャ45%プティヴェルド10%。こちらは若干凝縮感、スパイシーがありますが、しなやかさ、丸みは同じく存在し、奥にポテンシャルを感じるので、2、3年後の熟成を待って飲んでみるのも楽しみです。

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9cotasにはイベリコのソテーが絶妙のマッチング

何せ毎年出来によって品種の比率、組み合わせが一部変わってくると思われますので、今後も限定又は新商品の登場が楽しみに待たれます。

トレドといえば、スペインの古都でもあり、規模的には日本の京都というよりは奈良といったところ。同じ地域には以前から愛着のある生産者「Arrayan(アラヤン)」もあることですし、ここも是非一度訪れてみたい産地です。