私が仲良くさせて頂いていて、尊敬もする3人のソムリエ、スペイン料理の超名店「サンパウ」の菊池さん、築地ワインバー酒美土場 (shubiduba)の岩井さん、そしてポルトガルワインの第一人者でカーブドリラックスの別府さんが、3カ国のワインの威信をかけて、笑いながらも割合とガチで勝負をされている企画です。

今回は4回目。前回の3回目に続いて参加致しました。趣旨は明快。今回はホームのオーストリア料理「ツークシュピッツェ」さんのオーストリア料理4品に対し、スペイン・ポルトガル・オーストリアそれぞれに供されるワイン3種類のうち、どれが一番料理に合うかを競いながら、その違いを楽しむという会です。

まずは早速一皿目。馬肉のタルタルとライ麦パン。ワインのとの相性という意味ではハードルの高い料理と言えます。肉のタルタルの真ん中に卵があるので、それをつけると味わいが変わります。卵がある味とない味、それぞれにワインの相性をみてみるのですが、オーストリア以外はロゼ、ポルトガルはさらにスパークリングという選択。オーストリアはゲミシュターサッツ(多品種混植混醸)のワインです。通常肉のタルタルですと、ロゼを持ってくると合わせやすいという印象はあります。

img_1312

単体では若干酸の強さを感じる、ポルトガルのスパークリング。肉と卵を絡めてもその相性の良さはそれほど変わらず楽しめましたので、非常に面白い組み合わせだと思いました。セレクトした別府さんの意外性をついてくる懐の深さには、いつもながら驚かされてしまいます。他のワインは、相性としては悪くないのですが、オーストリアは卵がない方が好相性、スペインは少し控えめで守りのマッチングでした。

 

二品目はコンソメのスープ。厚みのあるクレープが入っています。この様なスープ料理もワインとの相性は非常に難しいといえます。なぜなら淡いスープに対し、少しミネラルがあったり、ボリュームがありすぎるワインだと、スープの繊細さを消してしまうからです。そういう意味では、スープ単体とは私の期待通り、オーストリアの「ツル・ルストラウネ」のロゼが非常に合いました。このワイン自体私は元々好きなのですが、スープの繊細な旨味とはバッチリです。

img_1313

しかし料理の中のクレープ、これがなかなかどうして分厚さ、食べ応え、しっかりとした主張があり、これを食べてみると、ロゼワインが少し物足りなくなってしまいます。そうすると逆にスペイン「ムガ」のスパークリングが、幅のある中にも溌剌とした味わいでクレープの厚みをしっかりと支え、溶け合う感じがします。熟成期間の長さも、この料理との相性に、上手く作用しているのかもしれません。これは菊池さんの思慮深さに脱帽です。

 

さて3品目、魚料理ボーデンゼー風の魚介のマリネと季節野菜。オーストリアに一度伺って少し料理を頂いた程度ですので、それほど詳しくありませんが、この国の料理にはやはり川魚というイメージがあります。名産の白ワインもそれにとても合うものが多いのですが、なんとここで出てきたのは2種の赤ワイン。ストライクゾーンの狭いピンポイント狙うプロのソムリエの駆け引きが非常に興味深いラウンドです。

img_1315

魚だけでなく野菜の噛みごたえもしっかりあり、主張するので、どのワインもなかなか面白い組み合わせでした。しかしここでも、魚にこれだけしっかりした赤ワインが合わせられないだろう、というぐらい主張のあるポルトガル・バイラダ「Vadio」の、酸が少し強めの赤ワインが、何故かしっくりきてしまいます。やはり料理との相性は頭で考えるだけではなく、実際に食べ合わせてみないと最後の最後、一部の料理が意外性を持ち、それが本当のマリアージュになりえることがあります。大事なことを再認識させられた、そして「別府マジック」も再認識させられた、そんな組み合わせでした。

 

最後のメイン、ビートルド風ポークシュニッツェル・マスタード風味。典型的なオーストリア料理として知られている料理です。岩井さんの仰っていた、豚肉にはリースリング。私がドイツワインを主に扱っていた頃から、納得の組み合わせだと思っています。ここで出てきた、私も大好きオーストリアの名門シュロス・ゴベルスブルグの「リート・ガイスベルグ」がカツレツのサクサク感、豚の脂と絶妙なマッチング、溶け合うような組み合わせです。

img_1316

今日の料理の中では最高の組み合わせと思えたのですが、ここでもう一つ私の好みのワインで、「レメユリ・ブランコ」2010。天才テルモ・ロドリゲスのワインであり、父親から引き継いできたワイナリーを、今まで自分が作ってきたワインの目線とは若干違ったスタイルで仕込んでいます。スペインを代表するこの白ワインの透明感、適度な丸みを帯びたボディー、これがポークシュニッツェルと非常に合うではありませんか!最後の最後まで悩みましたが、紙一重、髪の毛一本ほどの差で、「ゴベルスブルグ」に一票入れさせていただきました。しかし、ここにレメユリを持ってくるところ、さすが菊池さんといったところです。

 

ホームグランドでの負けが許されないオーストリア、しかし皆さんの投票結果では見事勝利を収めました。おめでとうございます。私個人は、相性の品数ではポルトガルでしたが、菊池さんの安定感、岩井さんの一発の高いマリアージュ力も、ほぼ同等に素晴らしいものに思えました。

こうしてプロの、同業のソムリエさんたちが、事前に試食までして、いろいろとワインを提供して下さり、非常に刺激になりますし勉強になります。尊敬する先輩たちの技を盗むためにも、今後もこの会にはちょくちょくと伺いたいと思います。

広告