5月の「おしゃれ酒との出会い場」は最も知名度のある人気酒造好適米、山田錦の飲み比べを行いました。
山田錦でタイプがだいぶ違うものを4種類、比較対象として雄町を使ったもの1種類用意しました。

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そもそも酒米というのは、日本酒の味を決める重要な要素の1つで、ラベルにも表記してあることが多いですが、ワインのぶどう品種ほどには個性が前面に出ることがなく、どうしてもそれぞれの違いを端的に説明するには難しい部分があります。
結論からいうと、今回4種類山田錦を飲み比べて「山田錦とはこういう味だ」と万人が納得するような端的な説明ができるかというと、そうではありませんでした。
(同じ酒米でも味がだいぶ違うことを証明したかったので、それはそれで良いのですが。)
世間で言われていること、たくさん飲んできた平均値を重ねてあえて説明しますと、「ふくよかで丸く味のノリが良い。しかし通りは良くてくどくない、後味にくるキレや酸味も細やかなことが多い」、くらいでしょうか。

<どうして山田錦はこんなに人気があるのか>

では当日の会でご説明したことに沿って、どうして山田錦がこれほど人気があるのかを確認していきましょう。

山田錦は兵庫県で1923年に交配で産まれた、酒米のなかでも古い歴史を持つものです。現在知られている酒造好適米はそのほとんどが昭和30年代以降に作られたものです。
また山田錦は遅稲の品種であり、晩熟であるため味のノリが比較的良いとされています。

早稲、晩稲の違いについて詳しくはこちらをお読み下さい。
品種特性として、精米(磨き)がし易く、心白も大きいことから、吟醸、大吟醸への加工がしやすいのも人気の理由です。

 
しかし歴史があるからといって山田錦が常に順調に栽培されてきたわけではありません。稲穂の背が高く、台風他風で倒れやすいなど栽培が難しいところから、食糧難で効率重視が求められた戦後においてはその栽培は活発ではありませんでした。

焼酎ブームを境に日本酒の酒造量が激減した一方、質の向上へシフトが切られたことにより、山田錦は再び脚光浴びます。
現在でも新酒鑑評会で賞をとるのはほとんどと言っていいほど香りの良い酵母と山田錦の掛け合わせの酒と言われています。

 

東北、九州の酒蔵に取材に行った時も8割から9割方県内の酒米を使っているにも関わらず、かなりの確率で県外から山田錦と雄町を買っている現状があります。
ワインで言うとある程度以上の規模のところが山梨の甲州、山形のデラウェアを買っていうのと似ています。

それだけ山田錦というのは作り手にとってもまた飲み手にとっても圧倒的な存在感のある酒米なのです。

 

<山田錦の産地、これまでとこれから>

山田錦の栽培地としてはオリジナルの産地兵庫県と、いち早く兵庫以外で栽培面積を広めた徳島県、そして兵庫に次ぐ生産地の福岡、この3箇所にほとんど限られてきました。今でも大部分がそこから買われているのですが、そこはおしゃれ酒。最先端の情報を得、はやりを追っていますので今回お出しした4種類、兵庫県産の山田錦は1本もありません。
実は酒蔵のあるそれぞれの県で独自に山田錦が栽培され始めているのです。
もちろん初めは県の試験場などで交配された、県オリジナル品種の栽培が先に始まったのですが、「県外からわざわざ買うぐらいなら地域性を出そう」、という動きから、各県の栽培が広まっているのです。
このサイトでもお伝えしているように、今後これらが独自に酒米を栽培したり、こういったブランド名を出せる酒米が、蔵の近くで栽培されたりする動きは加速していくでしょう。

 

<山田錦4種+1の味わいレポート>

さてこの日にお出ししたお酒の味の違いです。

 

三重 義左衛門BLACK 純米吟醸
三重県の山田錦を使ったお酒。今回の中ではとも軽快で繊細なタッチ、するりと飲みやすく香りも穏やか、かつ華やかです。30種類前後の酵母をで仕込んだ酒をブレンドしているだけあって、味わいにクセが少ないのが特徴です。場面を問わずアペリティフや、幅広い惣菜と合わせることができるでしょう。

 

神奈川 昇龍蓬莱 生酛純米
ややフレッシュで軽快なタッチと芯のしっかりした、引き締まった味ののりが両立されています。
基本的には飲みやすく品の良いお酒でありながら、クリスピーな風味を活かした揚げ物、寿司とも合うといえます。
徳島産の山田錦を使っています。

 

滋賀 旭日 生酛純米
滋賀県で杜氏が自らの田んぼで仕込んだ山田錦を使用。生酛らしい味の深み、コクやの乳酸の風味、中心にしっかりとした幅を感じます。
味わい方としては冷やしすぎないのがポイント。また燗酒にしましたが、冷や(常温)で充分美味しく、それほど温度上げる必要もないと感じました。

 

山口 猿楽 純米吟醸
山田錦は山口県産。この蔵の酒は基本的に濃密なものが多く、パンチのある酒を目指して造られています。
吟醸と名がつきますが、相当に濃密、たっぷりしっかりとしたコク、深みを感じます。
クセのあるチーズやソースのしっかりした赤身肉(鴨、牛、ラム)等と頂くのがお奨めです。

 

三重 るみ子の酒 無濾過生原酒(雄町)
これは山田錦との比較対象でお出ししたお酒です。猿楽ほどではありませんが、こちらもはまだしっかりとしたお酒厚みはそれなりに感じます。ただ旭日のような芯がしっかりしたというよりは緩やかさ豊かさがあるタイプ。
これも参加者の個人差はありましたが、やや燗にして飲む方が好みという方が多かった様です。 温度あげて。柔らかさを楽しむべきお酒なので、やはり温菜、おでんや煮込肉などとの相性が良いでしょう。

 

酒米を極めればお酒が全て分かる、とは思いません。しかし重要でかつ比較的分かりやすいファクター、しかも山田錦は誰もが認めるスタンダードです。
まずは各蔵の山田錦を飲み比べることが、日本酒を知る上での登竜門であることは間違いないでしょう!

 

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