能登杜氏にスポットを当てたドキュメンタリー映画「一献の系譜」。その監督石井氏の第一作「めぐる」の主人公の職人、三重県の大人気銘柄「作」の杜氏・内山氏、同じ三重の伝統工芸の職人が一同に会し上演会>クロストーク>作と三重食材料理のマリアージュという濃密な会があり、そのレポートです。

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「めぐる」という映画をめぐるクロストーク。登場人物が多いので整理しておきましょう。

まず生き物の模様などに用いられる型紙を作る職人(兼問屋) 小林満さん

その型紙を作る若手職人 那須恵子さん

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その型紙を使って着物などの染め物する人 藤本義和さん

職人にスポットライトを当て良さを発信する人 石井かほり監督

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伊勢型紙の地元でありラベルや法被などにそのもの模様を用いる酒造りの職人 内山智広杜氏

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今回は日本酒に直接関係ない?と思われそうな話も出てきますし、色んな分野をまたぐので話の筋が見えなくなる恐れがありますね。

その為結論から先に言っておきます。職人には2つの厳しい側面がある、というのが今日のテーマ。

  • ① 徒弟制度をはじめ、技を極めるための修行、技術そのものの難しさ、複雑さ

>ああ、職人といえば、と皆さんが想像されるもの

  • ② この仕事を続けられるのかというキャリア、収支環境としての厳しさ

>こちらほうは意外と見落としがちであり普通に生活する我々がこれを見落とすことが職人の活躍の領域を狭めている、という面もある。それに警鐘ならしているのが石井監督、とも言えます。

 

<職人が技を極めるための修行、技術そのものの難しさ、複雑さとは>

まず、多くの方がご存知かも知れないが、日本酒作りの杜氏をはじめとした職人の仕事の過酷さをおさらい。朝早くから洗米、掃除など非常に冷たい水で手作業、手は赤切れ、逆に麹室では30度前後の暑さの中で麹米を混ぜ、重い米をひたすら運ぶ、寝ないで麹管理など等、重労働の上に毎日寝不足な肉体労働であります。

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内山杜氏いわく「最初の会社に入社した頃は30歳以上離れた先輩の職人集団ばかりで年齢が開いていた。専門学校で“今の日本酒業界なら上の職につける”と言われたこともあり入ったが、時間は不規則、日曜は休めないなどブラックそのものだった。辞める人が続出した為、その専門学校から日本酒業界の斡旋が出来なくなるくらいであったが、その頃から続けている人が、今は皆杜氏になっている。」

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伊勢型紙も同じ。職人の小林さんによると「引彫(縞彫)という仕事は特に大変で9時間座りっぱなし。立ったり座ったりができない。食事も取らないし、手洗いにも行けない。なぜなら動くとわずかな目線が変わり、続きができなくなるから。途中で立とうものなら、熟練の職人にはその箇所がばれるくらい。職人42年やってそれ以外の技法でも100点の出来は一度もない」

 

<職人の仕事をそのまま切り取った映画「めぐる」を観て見えてくるもの>

これが染色家だとどうなるのか。作業内容に密着したものこそ前述の「めぐる」。

木版染めは一度途絶えた染色技法を藤本氏が復活させたもの。(この映画の染め方いは伊勢型紙自体は登場しない)

この監督の「制服」の着物も、木版染めで蝶があしらわれている。

多く独特の道具があり、木版は一つ一つ手彫りで作られ、染める色合いもそれぞれ納得いくまで混ぜ合わせ丁寧に決められる。

それを一つ一つ木版に塗り、生地に押し付けて作業。

映画の中で藤本氏は「弟子入りしたころ厳しさもあり逃げ出した事もあった。しかし今では仕事が楽しくて仕方がなく、何日同じことを続けてもきついと思うこともない。」と説明している。

 

映画を見ても、木版染めは、設計図から完全な手作業だし、版を押し続けるのは一見単調な作業にも見える。その先に出来上がる作品を見れば、そのアナログの一つ一つの作業こそ最重要ファクターだし、神々しくも見えてくるのだろう。

 

石井監督は撮影当時を振り返り「染めのことなど全く知らない未自分にも、とても丁寧に教えてくださった。その姿に、真に仕事を楽しむ姿が垣間見えた。」

また「この“めぐる”がなければ、ほかの道に進んでいたかもしれない。」とも。この作品と藤本さんとの出会いこそが「一献の系譜」にも繋がると分かった。

 

<この仕事を続けられるのかというキャリアを維持する厳しさ>

そして今回のキーパーソン那須さん。彼女も「仕事をやらせてもらえる環境になったので、仕事(彫り)自体が辛いとは全く思わない」そう

ただし「彫ること以外、つまり販売したり、この先の生活につなげていくプランニング、回すことが大変難しい。」と話す。これこそが2つ目の、職人にずっとついて回る壁だろう。

 

実際那須さんも「型紙に衝撃を受け、弟子入り志願したが、最初は門前払いをされた。粘り強く頼み込み、彫らせてもらうことができた。」という経緯を持つ。

 

その那須さんを断った側、という小林さんは理由を「業界に閉塞感があり、食べていけないので、雇っても申し訳ないという気持ちから。ただ那須さんの様に今の若手は自分で考えて出来る人もいるので、今では自分でリスクを負えるならやってもらって構わない、と答える事にした。」と話す。

実は戦後昭和30年ぐらいまでは着物は需要が多かったそうで、東京にも染屋が200件以上あり、それらが一斉に注文するので、伊勢型紙の職人の方もピーク時には300人ほどいたそうだ。

 

「この型紙で染められる人がいないことが問題。」と藤本氏が嘆く様に、深く関わる間柄だからこそ、お互いに先細りになる両業界の宿命が残念ながらある。

ただ同時に、若手の那須さんに対する期待値が相当高い藤本さんは「染めに頼らず、伊勢型紙そのもので、色んなものとコラボして、型紙の使い方自体を柔軟に考える必要があるのではないか。」とはっぱを、繰り返しかけることも忘れなかった。

 

内山さんも「4年後に(最初の会社を)先が見えず、辛くてて辞めた。一旦やめてしまったが、一冬でもいいからという(現在の)清水清三郎商店の誘いによって、半年だけ造りをした。その後、その時の杜氏が退職することとなり、杜氏を引き受けることになった。」という数奇な運命をたどる。

しかしこれは、私が他の杜氏の方からも良く聞く話と同じで、偶然に見える必然、それを引き寄せる人こそ、今回の5人をはじめとする職人かも知れない。

 

<技と技の融合で超えていく。職人を支える愛好家がいて超えていく壁>

そんな内山杜氏が手がける「作」の新シリーズ「Impression」シリーズには、伊勢型紙をモチーフにした素晴らしい透かし彫りが入る。

「アレンジして提案柔軟なコラボレーション、相乗効果を上げながら伝統守ることも重要。」全員が口をそろえたこの締めの言葉に、伝統工芸、文化を守るヒントがある気がする。

 

本サイトは、ワイン日本酒に特化したものでありながら、当然「食」に関しても関わるし、その先に器、地方文化とつながり、今回の話も無縁でない。

むしろ日本酒の魅力にとりつかれた我々が率先して、日本の伝統文化を率先して、シェア、コラボ、ハイブリッドさせていく必要があると思えた一日でした。

 

<作など4種飲み比べと三重の食材の料理>

さてこの後はお楽しみ「作」4種類と、三重の食材を使った「三重テラス」特別メニューの組合せ!

この4種類の豪華飲み比べ。左から

 

イセノハナ 純米吟醸

地元銘柄「鈴鹿川」カテゴリー。4つの中で最も切れる辛口。穏やかでオーソドックスな味わい、でも透明感は健在。生の魚、刺身に重宝しそう。

雅乃智 中取り (純米大吟醸)穏やかな旨み、とろみ、ゴージャスでいて軽やかさも残る。重苦しくなくこの甘みが感じられるのは絶妙。

穂乃智 (純米)旨みとエッジの僅かな苦味、キレがつりあっている。

Impression M 純米吟醸

透明感、とろみに微発砲の華やかさ、高揚感が加わった、減りが早いのが怖い内山杜氏自信作

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このあたりとは、Impression Mは万能の相性。ゼッポリーニと穂乃智も良い組み合わせです。

写真が撮りきれなかったのですが、、、

志摩さばの冷燻

鮮魚のエスカベッシュ

あたりとは、甘さがあるので合わないと思っていた「穂乃智」あたりともとても良い相性。魚の旨み、脂と味付けのおかげでしょうか。

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奇跡の3ショット。清水清三郎商店社長、内山杜氏と、このイベントの為に京都から急遽帰ってきたという某有名酔いどれんぬさま。

 

<関連サイト>

伊勢型紙について、組合HPによると

「伊勢型紙とは、友禅、ゆかた、小紋などの柄や文様を着物の生地を染めるのに用いるもので、千有余年の歴史を誇る伝統的工芸品(用具)です。」

詳しくは「伊勢型紙協同組合HP」

http://isekatagami.or.jp/?page_id=16

 

那須恵子さん
インスタグラム(多くの作品が掲載されています)
https://www.instagram.com/kamihori74/
石井かほり監督作

めぐるHP

http://www.gulicreates.com/meguru/

一献の系譜HP

http://ikkon-movie.com/

 

そして石井監督プロデュースの日本酒イベント
日本酒×オステリア・トット イベントvol.3

https://www.facebook.com/events/591794941197236/

 

最後までお読み頂きありがとうございました!

 

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