ブルゴーニュワインを多く手がけるインポーター、ラックコーポレーション主催で著名ドメーヌの5人の女性醸造家が来日し、合同でセミナー”5 Vigneronnes au Japon 2018” が行われました。

参加したのは

①ピエール モレ Pierre MOREY アンヌ モレさん Anne MOREY

②ジャンジャック Jean Jacque CONFURON ソフィー ムニエさん Sophie MEUNIER

③エリック ド シュールマン Eric de SUREMAIN ドミニク ド シュールマン Dominique de SUREMAIN

④トロボー TOLLOT BEAU  ナタリー トロさん Nathalie TOLLOT

⑤シモンビーズ Simone BIZE 千砂ビーズさん Chisa BIZE

の5人です。(紹介順、以下通し番号で表記。大文字のみの表記が苗字。以後敬称略。)

 

セミナーは以下の5項目に従い進められたので、それにそってレポートします。

ワイン造りのどこに一番重きを置くかのほかに、自ら選んだワインに合わせる料理レシピなど、通常の生産者セミナーにない要素もありました。

 

近年2年の収穫について

各ドメーヌ本人たちのイチオシキュヴェ

一番のこだわり、ブドウにかける想い

ワインのみならず料理も作る。醸造家の手料理とマリアージュ

15種テイスティング

 

 

<近年2年の収穫について>

まず2016年の収穫について。量に関しては歴史的な「不作」も、質に関しては素晴らしい様だ。

①アンヌ「春の霜のせいで収穫がほとんどできず、苦労した”ダメ”な収穫。量が少なかったものの、質が大変良い。」

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②ソフィー「同じく春の霜で収穫が減った。フィネスと熟度のある年。」

③ドミニク「40年の栽培生活の中で最悪のヴィンテージ。出来たのは僅か16樽のみ(翌2017年は192樽)。ふくよかで香り高く、ハーモニー溢れる味わいに仕上がっている。

④ナタリー「4月17日の忌まわしい霜のせいで4分の3の収穫を失った。84歳になる父も初めての経験だと言っている。クラシックでいかにもブルゴーニュ的な骨格、新鮮さを持ったヴィンテージで、過去では2002年、2010年などと似ている。」

⑤千砂「対照的な2年。この年はいわば絶体絶命からの自信作。8割収穫は減った。特にコルトンシャルルマーニュ、1erCru(一級畑)のダルメット、ゲット、セルパンティエールに関しては造ることすらできなかった。

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一方2017年。全く対照的に、呪われたここ数年を払拭する量が見込まれる。

① アンヌ「質量ともに近年最高の出来。」

②ソフィー「質量バランスともに優れており、骨格があり、フルーツにタンニンが溶け込んでいる。」

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③ドミニク「シャルドネはミネラルと緊張感を持っている。ピノノワールはタンニンと色付きが良い。」

④ナタリー「熱かった為、熟してチャーミングな果実味。収穫時期は早かった。質量ともに良いのは2009年以来久々のこと。選果が要らない位であった。」

⑤千砂「(造りの過程の為)まだ出来についていうのは時期尚早だが、ハッピーだった年。白は酸、ミネラル、果実味のバランスがよく、グレイトヴィンテージとしての質があった。一方、赤はやや早飲みタイプ。早くからバランスが取れたている。」

 

<各ドメーヌ本人たちのイチオシキュヴェ>

続いて生産者それぞれのオススメアイテムが紹介された。

①アンヌ「ムルソーテッソン。畑の標高は中ぐらいの高さ、同じ並びではほかの畑は皆一級畑だが、この畑だけ角度が悪く熟す速度が遅いが、欠点はそれぐらい。風景が良く、ムルソーの畑の風景写真で良くて使われる。エレガンスとバランスの良さがある、上品な味わい。是非一度飲んでほしい。」

②ソフィー「コート ド ニュイ ヴィラージュ レ ヴィニョット。ニュイ サン ジョルジュの隣村、プリモ プリセーの畑。この村では一級畑はニュイ サン ジョルジュ1erCruとして瓶詰めされ、その下の村名格はコート ド ニュイ ヴィラージュとなる少し複雑な仕組み。ドメーヌ目の前の畑で土壌は浅い。ダントツのコストパフォーマンスといえるのでは。オート コート ド ニュイとよく混同されるが、まったく違うもの。」

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③ドミニク「モンテリー一級 スー ラ ヴェル。標高300メートルに位置し、粘土質と石灰の深い地層。3haあり、樹齢は25から60年。ピノノワールに最適な畑である。」

④ナタリー「シュレ レ ボーヌ。5世代にわたり家族が住み続け、全体でも約40haのみの小さな村であり、30年前はフランスでもほぼ無名であった。当社でも所有する28ha中8ヘクタールがこの村。その中でも 2haはピエス デ シャピトルという特別なリューディー。丘の下の粘土質での畑で、フルーツ味が乗りやすい。」

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⑤千砂「1つに絞りきれないので2つに挙げさせて欲しい。看板商品としては、オー ベルジュレス。ブルゴーニュに移住し、ワイン造りに携わって、畑ごとの風の吹き方がどれだけ重要性か身にしみて感じてきたが、この畑は、ずば抜けてその条件が良い。南東向きで北風と西風が両方から入りこみ、湿気があってもすぐに乾く。その点、常に地の利を得られるが、唯一の例外が2013年。その2つの風で雲が上空に45分間停滞し酷い雹にさらされたことがある。表土薄くミネラルにあふれ、エレガンスとエネルギーに溢れる畑。

思い入れがある畑はセルパンティエール。この畑は周りに泉が多く、水の流れが入り組んでいるので、そこからセルパンティエール=蛇という名前がつけられていたらしい。流れてくる水が溜まり、果実が育ちにくい。そのかわり猛暑に強い。出来の悪い畑だけあり、色々な実験をさせてもらっていて、2008年以降ビオ栽培など取り入れている。自分の試みに対していつも答えを出し続けてくれる、ありがたい畑。」

 

 

<一番のこだわり、ブドウにかける想い>

醸造で最も重要な要素は何か?という質問にはヴィニュロンヌという意識が高い彼女達は、やはり違うアプローチで答えていた。

①アンヌ「(醸造というより)葡萄作りに限る。ビオディナミ(積極的有機農法)の錠剤1つとっても重要。ブドウ栽培家をヴィニュロンというが、その栽培家が葡萄の父なら、醸造はエルバージュと呼ぶ。これは育てるという意味。文字通り素直に育てて延ばすことが重要。大切なのはぶどうとワインの声を聞くこと。情熱と愛を傾けること、そして忍耐力。」

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②ソフィー「前のアンヌと同意見。素材が良くないといけないので、葡萄が最重要。観察をよくして見極めること、厳格に手を施すこと、時には直感力も必要。

③ドミニク「収穫は100回やってもそれぞれが毎回違う。ルールはない。状況に沿ってブドウを丁寧に天然酵母を使い、木桶で発酵させる。近年垂直式のプレス機を導入しそれににより、より思い通りに発酵ができるようになった。物事にシンプルに対応すること、テクニックを使いすぎないことが重要。」

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④ナタリー「一番大切なものを決めることは難しい。1つ1つの日常が全て大切で、特段何かを挙げないのは秘密にしているわけではない。ヴィニュロンとして葡萄が大切であり、うちで働いている栽培人10人は、それぞれ8割近くの時間は外で費やす。収穫をしてすぐに時間をかけず醸造することも大切。もちろん機械設備の改良も必要。2014年からグラビティーシステム(重力式醸造)を導入している。」

⑤千砂「夫の亡き後、よく味が変わったといわれるが、基本的なことは何も変えていない。ただ違いを考えてみると、夫は22年haを同じように栽培していたが。2人の子育てを経験した自分は、畑ごとのキャラクターでブドウの形状、大きさが違うので、それに対応したワイン造りを行う。主に3通りに分けて醸造し、防御剤やブドウ引き締める石英などを使い分けている。石英は、前年ブドウがブヨブヨした時にまき、引き締める効果がある。夫の全房発酵を踏襲している。自分は収穫のみに注力し、発酵はは赤白別の担当者がいて、主に任せているが、日々テイスティングで確認している。天然酵母を使う。一番大切な工程といより緊張するタイミングは、ワインプレスの工程。ワインとして命を吹き込む誕生の瞬間であり、早いと味にばらつきが出るし、遅すぎると仕上がりすぎて、フレッシュ感とバランスをなくす。プレスしてからは単純。シンプルにきれいに仕上げる事だけを気遣う。輝きがあるワインを作ることを目指している。」

 

 

<ワインのみならず料理も作る。醸造家の手料理とマリアージュ>

女性醸造家ということもあり、それぞれに得意料理を一品、それに合わせるべきそれぞれのドメーヌの商品ワインも紹介された。

① アンヌ「ウフ ココット オ フォアグラ  Oeuf cocotte au foie gras」

フォアグラのテリーヌと地元の卵を使って仕上げる。サイコロ状にテリーヌ半量を切り分けココット(耐熱皿)に並べる。残りのテリーヌはペースト状にしてと生クリームを混ぜ合わせ、耐熱皿に卵を割り落とした上から、それを注ぎオーブンで焼く。急なもてなしには卵料理が一番。滑らかさのある熟成したムルソーシャルムがオススメ。

②ソフィー「ジュー ド ブッフ オ ピノノワール Joue de boeuf mijotée au pinot noir」

牛のほほ肉とベーコン、タマネギ、ニンジンを鍋で煮込んだ後、ブーケガルニを使い、ピノノワールを入れ更に煮込む。その後オーブンで3時間ロースト。じゃがいものピュレとともにいただく。やはりピノノワールを合わせるのが良い。

③ドミニク「オッソブーコ  Osso buco」

イタリア料理だが、ピュイフュイッセのレストランロー デ ビーニュ (L’O des Vignes)というレストランのセバスチャンシャンブルSébastien Chambruシェフに教えてもらったレシピ。子牛のすね肉、人参、玉ねぎ、トマト、白ワインなどを加え、弱火で煮込む。レモンやオレンジの皮を仕上げのときに加えることで、うまみ爽やかさを増す。82年や89年など熟成したピノノワールがオススメ。

④ナタリー「ブレス鶏のロティー Poulet de Bresse rôti」

ブルゴーニュの近くにある鶏の名産地、ブレスBressのものを用いる。ちなみにコルトンブレッサンドという畑はこのブレスの地名から来ている。焼き加減として自分は低温で長時間かけて焼き上げ、仕上げに少し温度を上げる。これでジューシーさをキープする。中にタイムやレモンを少し入れる。途中ソースをかけ続けて焼くことが大事。ポテトのピュレにあう。ショレレボーヌがおすすめ。

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⑤千砂「失楽園鍋」

乾燥だしパック、鴨の皮目を少し焼いてからスライスしたものと、クレソン、お好みの野菜を加えて煮るだけ。熟成した又は香ばしさのある赤ワインを勧める。ダシの旨味のような2008年か、香ばしさのある2011年を合わせると良いでしょう。」

 

 

<テイスティング>

5社各3種ずつ、計15種の味わいを簡単にお伝えします

<①ピエール モレ Pierre MOREY>

ブルゴーニュ シャルドネ 2015

滑らかで熟れたオレンジピールなど、複雑な果実の旨みを閉じ込めた、満足度の高い一本。ミネラルも通っており、バランスが崩れない。

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ムルソー  2013

淡い黄金色して蜂蜜のようなフレーバーも出かかっている。やや熟成感をあるマルメロなど熟れた果実、一方でフレッシュな柑橘のフレーバーも出る。細やかな味わいの変化、流れるようなお酒の構成など、既に非常に高いポテンシャルを示している。

モンテリー 2014

果実味が前面にでてやや甘みが乗り、かつ少しこもった印象。バランスが取れるにはまだ少しかかりそうだが、フローラルな風味で、熟成させるとゴージャスな熟成感が出そうである。

<②ジャンジャック Jean Jacque CONFURON>

コート ド ニュイ ヴィラージュ レ ヴィニョット 2014

滑らかででバランスが取れており、香りもフローラル、ジューシーで通りが良く、今飲んで楽しめる味わい。

ニュイ サン ジョルジュ  レ フルリエール 2014

黒っぽさがあり密度も適度。旨味、ふくらみがあり、まだ若さがあるが、全体の角が取れてくると面白そうなイッポン。

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シャンボール ミュジニー  2013

集中力と迫力、コクがある。現状閉じた中に、やや暗めの果実の風味とかタンニンが開き始め、あと数年で飲み頃を迎えそうな、先が楽しみな一本。

<③エリック ド シュールマン Eric de SUREMAIN>

リュリー プルミエクリュ ピヨ ランタンポレル 2015

パインやマンゴーなど、丸くまろやかボディに、穏やかなミネラルが溶け込んでいる。フルーティーでメリハリがあり、かつしっとりとした酒質がやみつきになる。

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モンテリー 2014

果実味に充実感があるが、ややタンニンが浮くのも目立つ。それがあと数年で溶け込めば非常に良い酒質になりそう。

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モンテリー 1er cru  シュル ラ ヴェル 2013

赤い果実の華やかなアロマが素晴らしく、真っ直ぐに立ち上がり印象的。舌触りも滑らかで、若さと熟したフルーツのバランスが緊密に取れている。すでに飲み心地の良い状態のヴィンテージ。

<④トロボー TOLLOT BEAU>

ショレ レ ボーヌ 2015

やや厚みのある果実味。飲むごとにミネラルと旨味が開いてきて、重層的な旨味等、じわじわとその魅力が伝わってくる静かなパワーを秘めたワイン。かつて(2011-2013)の薄く軽やかで、伸びやかなこのキュヴェのイメージとはやや違ったヴィンテージ。

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アロース コルトン 2014

旨みが出始めているが、全体がややかっちりとした印象。ミネラルもしっかりと主張して、4,5年後にようやく本性表すことが出来そうなワイン。

サヴィニー  レ ボーヌ 2013

のややタンニンが残り、しっかりとした丸み、とろみを伴った果実味がしっかりと主張する。やや黒っぽさ、果実の密度と甘さが出る。

<⑤シモンビーズ Simone BIZE>

サヴィニー レ ボーヌ オー グラン リアール 2013

今読ん飲んで複雑。華やかさとバランスの取れた味わいを堪能できる。細やかでフレッシュ感があり、緻密。素直にうまい。シモンビーズらしさが体現されている。

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サヴィニー レ ボーヌ 1er cru レ フルノー 2014

やや甘みボリュームを感じるが、艶やかでよく熟した印象。果実味は口当たりよく充実感を与えてくれる。ポテンシャルも申し分なく、数年後の飲み頃を迎えるのも楽しみ。

サヴィニー レ ボーヌ レ ブルジョ 2015

果実はやや黒系が勝り、少しこもりがち。甘み、旨みなど要素は充実しており、2021-2024頃にかけてフローラルでゴージャスな複雑さが出そう。

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