第二回ピノノワールサミット

今年で2回目を迎える、日本のピノノワールに焦点を当てたイベント。去年に引き続き、第1部のパネルディスカッション、第2部のテイスティングともにレポートします。

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第二部テイスティングの「後編」はこちら

昨年第1回のレポートは下記からご覧下さい

2017年第1部パネルディスカッション

2017年第2部テイスティング

 

ここでは第1部のパネルディスカッションの模様をお伝えします。

今年は「世界から見た日本のピノノワール」というテーマのため、第一部のパネルディスカッションも日本の去年とパネラーが全員違う上に、日本の生産者は三者のみ、他には海外ニュージーランドの生産者と、日本の輸入業者インポーターを加えた五人での話し合いでした。

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参加する5名は左から

コヤマワインズ 小山 竜宇氏

ドメーヌタカヒコ 曽我 貴彦氏

山崎ワイナリー 山崎 亮一氏

カーヴドッチ 掛川 史人氏

ラックコーポレーション 矢野 映氏

(以下敬省略)

 

このディスカッションで議題にのぼった項目は主に以下の3つ。順に記載していきます。

特にクローンの話はマニアックに思われるかもしれませんが、「ピノノワール」と大きくくっている枠の中に、色んなピノ系の品種がある、という位個性が違い、それを知っていただくには絶好の話だと思います。

 

*今の土地でピノノワールを育てる意義と現状

*ピノノワールの現在用いているクローンについて

*今後の課題。特に海外から見た根本的な問題

 

 

* 今の土地でピノノワールを育てる意義と現状

まずは自社紹介と共に各社の今のピノノワールの取り組みについて。国内三社三様といった印象。インポーターの今までの経歴を主に話されました。

 

ドメーヌタカヒコ(今最も日本ワインで手に入りにくい銘柄の1つ。北海道余市にて繊細で奥深いワインを造る。)

曽我:「もともと肉や魚より野菜料理などが好きだったため、日本の出汁や旨み繊細さを活かしたワインが造りたかった。日本では雨が多いことが問題になるので、雨が少ない、寒冷地を探して結果ここに行き着いた。12 %台を補糖なしで作ることが最低限の条件といえる。

他と違ってステンレスタンクがなく、プラスティックのタンクでの発酵している。建物もワイナリーというよりリンゴの倉庫だったところ。2.5ヘクタールの畑からピノノワールのみ栽培している。

ピノノワールなら日本の出汁の様な幅、深み、余韻のあるブドウを育てることができると思い選択している。香りもフルーツや花など直接的なものではなく、もっと情緒的で繊細な、山や神社のような繊細な風味といったものを意識している。」

 

山崎ワイナリー

(札幌の東、三笠市の家族経営の小さな生産者。少量生産ながら人気でここもすぐに完売する)

山崎:「北海道空知三笠においてワインを造っている。地層が縦に走り、貝殻なども含む水はけの良い土地。2004年以降家族での瓶詰めを始めた。

ピノノワール父が植えたものなので、自分で選んだわけではない。おそらくピノノワールが好きだったのではないか。今では10品種植えている。中でもピノノワールは、全12ha中4haあり、シャルドネとともに最も多い。ピノノワールを育てるには樹勢を抑えることが最も重要と考えている。

秋の気温が低い産地であり酸が残る。収量も少なく、余市と比べれば1haあたり半分程度、北海道の比較的近い産地岩見沢と比べても気候が違い、積雪だけ見ても、三笠で2メートル積もる時に岩見沢では1メートル程度。」

 

カーブドッチ

(92年越智氏が始めたワイナリーで、現在ではその周りに4軒が取り囲む。)

掛川:「新潟駅からバスで40分ぐらいの場所。雪国のイメージがあるか、平均して積雪も多いときで年20センチ弱と、比較的温暖な気候で砂質土壌。昼夜の寒暖差もそれほど大きくはない。30年前造成のために山地を削られその跡地が畑になったもの。痩せた土地を活かしたために、(他の作物でなく)葡萄畑になった。

ピノノワールは98年から植樹、1.2ヘクタールある。栽培に病害などリスクが多いのが難点。自分が2003年に入社したころから少し多すぎるのではないかと思っていた。

痩せた砂質土壌だからこその香りが出る。そのかわり果実味のりが悪いため、味わいでは勝てない。心が折れ、切ろうかと思ったこともある。今では単に良い味わいよりも、楽しいものを造ろうと思っている。」

 

コヤマワインズ

(ニュージーランド・ワイパラ・ヴァレーに2009年自らのブランドを設立。同じくワイパラ・ヴァレーにある有名ワイナリー マウントフォード・エステートは1991年に設立、小山氏もアシスタンワイントメーカーとして働いていた。経営難に陥る状況を見かね、醸造家として育ててくれた古巣のためにと取得。<日本ワイン ピノ・ノワール実行委員会解説より)

小山:「大学で醸造学を学ぶ目的と、ピノノワール、リースリングに向いた栽培地を兼ね備えたところを世界中探したところ、このニュージーランドに行き着いた。当時はニュージーランドのワインが世界市場に出て来始めた頃だった。

ニュージーランドでは赤ワインの70パーセントがピノノワールであり、ワイン全体の世界の生産量では世界の0.05パーセントを占めるに過ぎないが、ピノノワールに限ればフランス、ドイツ、米国などについで、世界第5位の生産国である。

ニュージーランドの特徴としては人口がわずか480万人で、生産されるものは輸出に頼らざるを得ない。元英国領ということもあり、ロンドン市場意識した輸出が多い。

“ニュージーランド・グロワーズ”という組織があり、生産者は全て加盟している。その団体が輸出を全て取り仕切り、官能試験もパスしないと出荷することができない。

味わいとしては90年代から2,000年代にかけて、現在の生産者の親世代が果実味を凝縮させる事を重視していた。その結果14.5%のアルコールを持つものも少なくなかった。

現在それを引き継いだ子の世代は、ピノノワールの品種特性を活かしたワインを造るため、繊細さアルコールの低さに注目し、13%台までに抑えることにしている。その結果収穫は2週間程度早く、その結果国内でも収穫期にばらつきが出ている。」

 

ラックコーポレーション

(ブルゴーニュワインの取り扱い社数で群を抜き、業界で知らぬもののいないインポーター)

矢野:「81年からワイン輸入をはじめ、当時はドイツワインのみだった。84年からブルゴーニュのワインを輸入開始。当時は少なかったブルゴーニュに特化し、90年以降取引生産者を増やし現在では80社にのぼる。

現在ではブルゴーニュワイン全体が価格が高騰したが、輸入開始当時80年代は78年のモンラッシェ特級畑が70フランで買えた時代。

ワインを取り巻く市場は常に変化している。ブルゴーニュ70から80年代は質も考えつつとにかく量を作る時代であった。90年代は自社瓶詰めが始まり、小規模生産者が台頭するがロバートパーカーの影響で、凝縮したワインがもてはやされた。現在はそこからの反動で、繊細なものが受け入れられている。」

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*ピノノワールの現在用いているクローンについて

いよいよ今回の肝、クローンについて。どういうものを造りたいからこう選ぶ、といった単純なものでなく、土壌、気候との相性を見ながら、全体の比率も重要な様です。

 

 

小山:「90年代から生産者同士の共同の研究、醸造面での協力が進んでいる。ニュージーランドでは誰1人“ブルゴーニュに追いついた”という実感はないが、ブルゴルゴーニにいつか追いつくピノノワールを造るという気概が皆にある。

そのために必要なことの一つ樹齢の高さである。するべきことのもう一つがクローンの選抜。ピノノワールのクローンは確認されているだけで2,000ほどあり、登録されているもので200である。

土地にあったクローンを植えることが大切で、大学何度でも“最低5種は植えろ“と教えられている。そうした土地との相性を探る作業が必要。」

 

山崎:「ピノノワール98年に植樹したが、当時のクローンの番号まではわからない。MV6 (Mother Vine 6)と言われる熟期(収穫)が早い種類を多く用いている。それは17年10月の霜でやられたように、リスクが低い方が望まれるから。凝縮味も必要なので糖度があるディジョン系も併用している。」

 

 

掛川:「植えた時の正確なデータがないだめ正確には不明。検査でこれではないかという憶測が付いている。ドイツ系、シャンパーニュ系、ディジョン系など、系統別にして植えてはいる。植樹は95年98年2000年。クローンといっても、かつては思うように苗木すらも買えなかった。」

 

曽我:「ピノノワールだけ植樹しているのでクローンは13系統ある。UCD6と言われるものと、ニュージーランドのエイブル(ABEL)と言われるクローンを多く使っている。これは熟すのが遅く、高い酸を産む。クローンによる味の違いもあり、ものによって品種が違うと思うぐらい個性が出る。

フランスのクローンを“おすすめ”ということで取り寄せたが、糖がのらすアルコールが低い傾向にあった。これが現地のはやりかも知れないが、自分の土地に合うとは限らない。

リスクを分散するため使い分ける。収穫期をずらしたり、アルコール調整をすることができる。

将来的にクローン選抜などピノノワールの良さを活かす選択を検討する余地がある。」

 

 

 

矢野:「70年代ブルゴーニュでは収穫の多く、病気に強いクローンを多用した結果、気候変動の影響受けることが多かった。今では量が少なく、成熟期が長い型のクローンを選択、植え替える時に数種混ぜることにより、リスク分散しているのが主流。

植え替えそのものではなく、半分はマッサルセレクションと言われる、自分の畑から優良な枝を接ぎ木する方法がとられている。そうした方式も使い、その土地にしかないもの、例えばジュヴレシャンベルタン村の枝を用い、この土地にしかないブドウからワインを造るべきとする考えも根強い。そうして植え替えをしすぎないことで、樹齢をキープしている。」

 

*今後の課題。特に海外から見た根本的な問題

最後の締めに、小山氏から、海外の生産者目線で痛烈な指摘がありました。この発言、問題提起があっただけでも、今回海外の小山氏がこの場に呼ばれた意義があるかと思います。

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小山:「日本は生産者の動きがバラバラで協力できていない。特に苗木の少なさの問題やウィルスにやられる樹の問題が出ている。ウィルスは軽視されがちだが、根本的な問題。それぞれの生産者の努力は認めるが基本なところが遅れている。こういった問題は生産者間で集まってやるのが大切。」

 

 

曽我:「小山さんの連携、情報共有の指摘は当たっている。褒め合いよりはけなし合いできるような関係を作りたい。

他には繊細で複雑なものを産むためには発酵方法もより研究していきたい。例えば亜硫酸を含むものと、含まないを併用している。何でも亜硫酸無添加がいいとは思わないが、あらゆる可能性を探ることが必要。」

 

山崎:「ニュージーランドのような機関の設立を日本でもしてもらいたい。苗木が手に入らない問題や、農家が少ない問題など、自分ひとり(生産者単体)ではどうしたらいいかわからない。」

 

 

掛川:「日本に関しては樹齢が圧倒的に低く、平均25年もない。樹齢が上がれば味も乗ってくるはずで、特に赤ワインで重要。クローンの特徴などのデータを集めることも大切。良い葡萄栽培できる環境づくりが必須。」

 

 

「ワイン造りのプロではないのでなんとも言えないが、日本人は元来仕事が正確できっちりとしたに正確なもの造りが出来る。一方ブルゴーニュはだいぶ北と言ってもやはりラテン気質。

また日本の土壌、テロワールという意味では元銀行マンでもありしっかりとしたプランを立てられる、ドモンティーユ氏が函館に新しいワインを設立する。それに際してブルゴーニュの専門家が多額の投資をして土壌調査を徹底的に行い、この地を選んでワインを造るということは相当自信と根拠があるはず。つまり日本のテロワールには可能性があるということではないか。」

 

去年の第1回では、生産者のピノノワール愛と将来の可能性が話されましたが、今回はそこにはだかる大きな壁、日本ワイン全体の大きな問題も提起されたように思います。

耕作放棄地は多いがブドウの作り手、農家のなり手がない。ワイナリー建設ラッシュで苗木がない上にウイルスの問題。超えなければいけない課題は多いものの、ピノノワールをすでに手がけている生産者も多く、樹齢の上昇と共に品質の向上は見られるでしょうが、そろそろ行政のサポートやワイナリー同士の協力は必要でしょうか。

 

最後までお読み頂きありがとうございました!

 

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