いつもお読み頂きありがとうございます、「竹林」醸造元、丸本酒造の6代目、丸本と申します。
今年もよろしくお願いいたします。

全12回の連載も5回目、今回から中盤に差し掛かってまいります。

 

 

ワインの味についてお話しするとき、何なにの品種はこんな味になるとか、どこどこの畑は最高のブドウが採れるとか、そんなふうに語られることあがります。それだけワインの味はワイナリーの中よりもブドウで決まるという事を示しています。

乱暴ながら、ブドウが7でワイナリーが3の比率で品質を決定付けるとしましょう。すると日本酒の場合は、まったく逆で米3で蔵7です。

 

理由は醸造方法が「並行複発酵」という複雑な工程を要する点と、原料が穀物であるという点です。「並行複発酵」とは(1、でんぷん→ブドウ糖)(2、ブドウ糖→アルコール)の変化を、発酵タンクの中で同時に進行させる高度な醸造方法です。

これにより(1)のプロセスも大きく味に影響を与え、ワインほどは原料特性がダイレクトに酒質につながりません。米質によらず甘口でも辛口でも自由自在に造ります。そのかわり、すべてのコントロールが難しくて、車の運転で言えば、箸でハンドルを摘んで運転するような感じです。
また、原料米の品質については「穀物検査による格付け」という、外見だけで評価する検査によって価格が決まり、この基準により全国津々浦々に流通が完備されています。

 

 

つまり日本酒の品質は、杜氏の(酒蔵の)方針と技で如何様にでもなり、原料の選択は穀物検査頼りと言うことです。しかし私は、「杜氏さん、そのお米ほんとうに使いやすい?」と言う疑問を持っています。その疑問を次回にお話ししましょう。

「竹林」丸本酒造のHP
http://www.chikurin.jp/