バローロというワインと産地は、日本でも知られるようになって久しく、実に多くの生産者のものが輸入されています。

その中でも確固たる評価と人気を持つカリスマは10指に絞られるところですが、そこに必ずと言っていいほど名前があがるのがルチアーノサンドローネ。カラフルな四角のラベルが印象的ですが、これも他のバローロ生産者の伝統的なラベルとは一線を画し、「モダンバローロ」の代表格とされる片鱗が見えます。

ルチアーノ氏が最初にフラッグシップ、「カンヌビボスキス」の畑の一部を購入してから、ちょうど40年の今年、愛娘のバルバラ氏が初来日しメイカーズランチが行われました。会場はバルバラ氏のたっての希望で、日本の伝統的な和食を堪能できる目黒雅叙園の「渡風亭」でした。

お伝えしたいことは山ほどあるのですが、下記の項目に絞ってレポートします

*一代で築きあげた新しいバローロの世界

*近年の作柄、気候について

*蔵出熟成酒「シビエパウシスSibi et Pausis」とは

*カンヌビボスキスの新名称「アレステAleste」について

*テイスティングコメント

 

 

*一代で築きあげた新しいバローロの世界

なぜルチアーノサンドローネが世界的な成功を収めることができたのか?その歴史を簡単に振り返っておきましょう。

ルチアーノ氏の父、つまりバルバラ氏の祖父は家具や樽の職人であり、ワイン生産はルチアーノ氏一大で興したもので、家業を引き継いだわけではありません。

 

彼は現在でも大手として知られている、「ボルゴーニャ」や「マルケージディバローロ」で、造りの修行をします。その間ちょうど40年前の1973年にカンヌビの中の1部ボスキスを購入する機会に恵まれました。

そして彼独自のワインをごく少量仕込むのですが、それがいきなり大物の目にとまります。イタリア系のアメリカ人でその後も有力な酒商として知られるマルクディグラツィア氏にまとめて買われるのです(よって現在までルチアーノサンドローネはアメリカ市場でも人気があります。)

しかし彼は、その後も「マルケージディバローロ」のセラーマスターとして働き続けながら、小さなガレージで自分のワインを仕込み続ける日々が続きます。彼を支えたのはかなり年下の弟(バルバラ氏とも年が変わらない)ルカ氏、24歳の時に父と同じ道を志すことになったバルバラ氏でした。

今から20年前の98年には現在のワイナリー施設が完成し、世界中で主流となっているグラビティーシステム(重力に逆らわず、造る工程ごとに下のフロアに落とす)のワイナリーとして体制が確立されます。

また96年からは、後述の限定蔵出し品、「シビエパウシス」もリリースされることになります。そしてルカ氏、バルバラ氏の子の世代アリシア、ステファノ、ジャコモの3人もワイナリーに加わって、ネクストジェネレーションの体制が整い現在を迎えています。

 

 

*近年の作柄、気候について

2015年は夏が暑く6 、7月、その後涼しい日々が続き、ほぼパーフェクトな出来栄えの年だったそうです。

一方今年2017年は非常に暑かった年で、病気はないものの、暑すぎて挑戦的だった年。収穫が2週間ほど早かったばかりか、収穫量もある程度減ってしまったようです。

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世界的に懸念されている、雹害をはじめとした異常気象に関しては、「バローロでは今はそれほど深刻ではない。アルプスが冷たい空気運んできてくれるので、天然の冷蔵庫の役割をしている。温暖化、異常気象というけれども、それは人間から見た短期的な判断で、長い地球の歴史の中ではありえることで、仕方がないこと」と話しました。真に日々自然と向き合っている人らしい感覚だと思います。

 

 

*蔵出熟成酒シビエパウシスSibi et Paucisとは

これはラテン語で「自分たちのもの、希少なもの」という意味合い。特定の関係者、顧客に向けた限定の蔵出しバックヴィンテージシリーズで、ネッビオーロのもののみ、全体の10パーセントだけを2つの熟成室でキープ。飲み頃になるとシビエパウシスのマーク付きで出荷されます。

私、編集長も自らの店で「シビエパウシス」のカンヌビスキスキ2003を扱い、テイスティングしたことがありますが、やはり新しいヴィンテージのものとは別格の、すばらしい出来栄え。果実味、旨味の乗り切った複雑なワインに昇華していました。値段は多少張りますが、それ以上の価値のあるものかと思われます。

 

 

*カンヌビボスキスの新名称アレステAlesteについて

確固たる評価と一代ながら着実な歴史を築いていきたルチアーノサンドローネ。このまま順調な造りを続けるかと思われるましたが、衝撃的なニュースが近年発表されました。同社の象徴でもある「カンヌビボスキス」の商品名を「アレステ」に変更するというものです。つまり今までの看板商品の名前を捨てることになります。これには最初聞いたときにバルバラBarbara氏も、「驚きと戸惑いがあり、すぐには同意できない気持ちだった」ということです。

アレステというのは、前述の姪・甥、アレッシア、ステファノの2人の名前を組み合わせたもので、まさに今後のワイン造りを担っていく次世代へのregalo(レガーロ=プレゼント)だったのです。

自分の望みを叶える事ができたルチアーノ氏にとって、その誇りに拘るよりも、次世代に何ができるかということを真剣に考えての決断だったようです。

すでに2013年からアレステという名前でリリースされています。

 

 

*テイスティングコメント

ドルチェット ダルバ Dolcetto d’Alba 2015

(オーク樽は使わず10ヶ月の熟成。)暗めのルビー色。凝縮してハリのある赤果実に、プラムなどのアロマ。ごく細やかなスパイスのタッチも含まれます。酸が鮮やかで目の覚めるようなフレッシュ感が口いっぱいに広がる。その後ゆったりとしてフルーツのコクが広がります。

Dolce(甘い)が由来の品種だけに、ゆるかったり乳酸ぽさが出るものが散見されますが、赤ワインらしくしっかり旨みを閉じ込めてくるところはさすがです。

合った料理:あん肝塩蒸し ○  たくあん ○

 

バルベラ ダルバ Barbera d’Alba 2015

暗く深みのある黒みがかった色合い。力強いアロマは最初若干埃っぽさを感じ、炭に近いようなローストやスパイスのような香りもとれます。コクとまろやかさ、まだ若いのに丸みがありながら、引っかかるところがなく飲めます。もちろん数年の熟成でより複雑みも増すことでしょう。

ネッビオーロだけじゃない、サンドローネ家のポテンシャルを知る、そして手ごろで味わえる恰好の一本です。

合った料理:まぐろお造り ○

 

写真左がバルベラ、右がヴァルマッジョーレ。品種ではなく土壌で色が全く違うことが見て取れます。(ロエロのヴァルマッジョーレは下記の様にかなり淡く、他のバローロはバルベラ動揺に暗めです)

 

ネッビオーロ ダルバ ヴァルマッジョーレNebbiolo d’Alba Valmaggiore 2015

(これはバローロ地区ではなく、タナロ川の左岸、ロエロと言われる近年注目されている産地。現在はアルネイス種の白ワインが中心ながら、かつてはネッビオーロが優勢だった産地だそうです。)

色合いは全てのワインの中で最も淡く明るく、透明感があります。軽やかで細かい爽やか、赤い果実のアロマ。味わいも細かく、すっきりとした味わいで、かつ華やか。バリックは使わず大樽で熟成。まさにブルゴーニュのピノノワールに通ずる、明るさと可憐な表情持った好感の持てるワインです。アフター酸の戻りが活き活きとして、やや温かみとじわりとした旨みを感じます。

合った料理:秋刀魚立田揚 ◎

 

ネッビオーロ ダルバ ヴァルマッジョーレNebbiolo d’Alba Valmaggiore 2010

わずかに色合いも落ち着きをみせ、アロマもしっとりとしている中にも、味わいはまだフレッシュさが残る印象。エキスがより前面に出始めています。ただ熟成させるとしても、あと数年位の方が、繊細な果実味を楽しめるでしょう。

合った料理:まぐろお造り ◎

木の子ご飯 ○

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バローロ レ ヴィーニュ Barolo 2013

明るく澄んだ色合い。鮮やかなルビー(赤)。タンニンもあるが細やかで、早く飲んでもそれほど違和感ない。味わいも練れていて、複雑で偏りがない。特に緻密な旨味とバランス感はさすが。

合った料理:鰤照焼 ○

 

バローロ レ ヴィーニュ Barolo 2007

ベーコンのような燻製肉のアロマが少し出始めている。色合いは明るさに落ち着きが出始め、やや暗い色合い。

細かいスパイスの風味も若干出始めているが、味わいは端のほうに熟成した複雑さが少し、中心のハリが主張しあって、もう少し熟成させたほうがピタリとフォーカスが合いそうなイメージ。暖かみと旨みを感じる、懐の深いワイン。

 

バローロ アレステ Barolo Aleste 2013

(アレステとしては初VT)凝縮した旨みにシルキーでペーストのような滑らかさ、若干ミルキーなノート、コクも感じられます。上記レヴィーニュにも見られる通り、2013年は過去のVTより比較的早飲み出来る印象。レヴィーニュとの違いは適度な緊張感があること、そして厚み、複雑さと共に黒っぽさが僅かに増すこと。

合った料理:鰤照焼 ○

 

バローロ カンヌビボスキス Barolo Cannubi Boschis 2007

旨味、複雑さ、やや引き締まったタンニンに、これぞネッビオーロという風格を感じます。練れた、しっかりとした旨味が感じられます。美味しいのですが、まだ酒質に集中力があり、あと5年で広がりも出てくるでしょう。

30年待たなければ飲めないといったガチガチの、かつてのバローロよりは肉つきよく、でも飲み頃までは(収穫から)15年待ちたい。そんなモダンバローロの至宝であることを考えると、決して高くない買い物かもしれません。

 

バルバラさんによると、齢70を超えた今でも、元気に畑に出ていらしゃるそうで「強く、実直で典型的なランゲの男性そのもの」ということ。この先も素晴らしいワインが期待できそうです。

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終始笑顔だったバルバラさん。実は10年前にバローロ数軒訪問時に伺った時は、どういうわけか約束の日時の認識違いで簡単な試飲しか出来ませんでした。ワイナリーでの再開とこの記事を読んで頂くことを約束しました。

 

ルチアーノ サンドローネHP

http://www.sandroneluciano.com/

 

 

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