少子化が進み、お酒の消費量が減ると予想される今後、いかに地方で素晴らしいワイン、日本酒を紹介していき、多くの人に飲んでもらえる環境作るか。それをテーマにお酒とワインを持ち寄った会「酒ワインハイブリット第3回 地方の酒ワイン業界の未来を考える」。場所は地方発信というコンセプトでは、この上ない格好のお店「青森PR居酒屋りんごの花」さん。青森の食材を使った郷土料理をいただきながら、日本各地の国自慢のワイン・お酒を持ち寄る会でした。
私編集長は京都府の北部の出身者ですが、関東に出てくるまで自分の土地のワイン、日本酒がこれほど素晴らしいと思っていませんでした。それどころか逆にネガティブなイメージを持っていました。丹波・天橋立の両ワイナリーは所詮お土産ワイン、伏見の酒はゆるく甘くて好みではない、と。自分の足元が一番見えていないと気づいたのは、関東に来てお酒の仕事始めて、ようやく数年経ってからでした。
この傾向は日本の多くの方が持っているようです。今回の会場「りんごの花」に初めて伺った陸奥八仙の会でも、多くの青森の方が「八仙の凄さを知ったのは東京に出てきてから」とおっしゃっていました。また、私は山形の日本酒・ワインの質の高さ、食材の豊富さに惹かれたのですが、地元の人はなかなかその魅力に気づいていない、というパラドックスにも気づきました。
それが気になり、参加者の方に前回同様アンケート取りました。自分の出身地を代表する料理は?同じく他の地方の方に奨められるワイン・日本酒の生産者は?地元でここが素晴らしいと思える酒屋、飲食店は?というものです。
食材・料理は割合皆さんスラスラと出てきます。意外と飲食店、酒屋も1つずつならおすすめがあるようです。ただ地元のワイン日本酒生産者となると、なかなかたくさんは出てこないようです。業界関係者が多いこともあり、ほぼ全員1つぐらいは挙げることができましたが、これは一般の人にとってはハードルが高いのではないでしょうか。
やはり自分の出身地で造られるワイン・日本酒の素晴らしさは、皮肉にも、他の地方出身で、広くいろいろなものを飲んで銘柄として気に入っている人のほうが、より詳しいという事実は揺るがないようです。
その傾向の出現として、現在多くの日本酒蔵では、地元流通用の銘柄と、県外流通限定商品の大きく2つに分けているところがほとんどです。当然地元消費者の財布事情に合わせてのことでしょうが、考えてみれば不思議な傾向です。
ワインお酒を地酒としてブランド化していく上では、やはりその土地の風土、文化をくっつけて発信していかない限り、なかなかリンクしていかないのではないかと再認識した夜でした。もちろん地方の飲食店に今以上にプッシュして頂く必要がありますね。
以下、今回味わった6種のワイン・日本酒です。
源作印 生葡萄酒
フレッシュ感があるのにまろやか、すっきり飲めるのに果実感も広がる、一言で決めうち出来ない、独特な酒質をもったワイン。煮物や軽めのチーズなら無理なく合わせられました。下記酒井ワイナリーと似た口当たりをもちながら、こちらの方がクリアです。
酒井ワイナリー 狸沢(むじなざわ)
渋み酸味は目立たずつるりとした口当たりながら、練れて細やかな果実味、熟れた風味がじわじわと広がる。しっとりとして細やかな旨みが癖になる、個人的には好みの一本。ただ人によって好み、評価が割れやすいタイプでもある。この日はトマトのオリーブオイル漬けが比較的合い、味噌を少し使った料理なら合うかもしれません。
遠藤酒造場直虎 純米吟醸 無濾過生原酒
原酒ながら比較的すっきり、もたつかず飲める。伸びと引き締まった旨み、すっと引くキレもある。しめ鯖に併せても臭みは出ず、旨みを引き出しつつ同時に後口をリセットする。癖がなく飲み飽きない。蔵直売限定品。
玉川 純米 山廃 無濾過生原酒
アルコール度は20を超え、この上ない濃密で迫力のある酒質。相当温度を上げた燗でもいけそう。塩辛いあてか強めのチーズくらいしか受け止められないので、通常の食事では、少し割って飲むのが定石。
幻の瀧 純米吟醸 諸味濾過生原酒
参加者の一人が、日本酒にはまったきっかけとなった銘柄ということで持参下さった。滑らかで、細かな旨み、落ち着きのあるゆったりした味わいで、通常のにごり酒が苦手な私でも全く気にならない舌触り。青森名物貝味噌と絶妙の相性をみせました。これも蔵直売限定品。
ワールドエンド リトルシスター(米・ナパヴァレー)
メルロ主体の、コクと重みがありつつ丸みがありバランスの取れた味わい。荒いタンニン、青さはなく艶やかで、こういったタイプのワインとしては、意外と今回の郷土料理にもまずまずの相性でした。牛・鴨には間違いないワイン。
この会では今後も懲りずに、ペースはスローでもリサーチをして、発信していこうと思います。
追記:この日飲み放題コースも頼んでいたのですが、私も含めた7人の参加者ほぼ全員が頼んでいたのが、何とソフトドリンクの「りんごジュース」でした!!ふじ、王林、紅玉があり本当においしいとおかわり続出でした!
さて、なぜりんごジュースが人気だったのか?店名が「りんごの花」というのもありますが、青森=りんごのイメージが定着していたからではないでしょうか!
地のもののイメージが定着すれば、そこに人気が出る。お酒の会なのにそこにヒントがあったのを、書き忘れたので追記させていただきました。