お陰様で初回から大反響、「世界一簡単」講座第2回。

今日は誰もが一番気になる、ワインと日本酒の「美味しい飲み方」を中心に、買い方も一部お教えいたします。

さてワインと日本酒を飲む時に一番大切にしなければいけない事はなんでしょうか?グラス?合わせる食事?それも確かに大切かもしれませんが、その前に根本的に注意しなければならないことがあります。今からお伝えする2つの項目だけ、まずは覚えてください(ワインと日本酒では、共通して言えることですが、それぞれに優先順位が逆になります。)

 

「ワインをおいしく飲む秘訣」

まずワインの飲み方

1.コルク・スクリューキャップを開けてからの時間 / 造られてからコルク・キャップを開けるまでの時間 (熟成期間)

2.飲む時の温度

日本酒の場合は逆に 1.飲む時の温度2.開けてからの時間、が重要となります。

なんだそんなことか、と思われるかもしれません。しかしこの2要素、ワイン、日本酒の道を極めている人、飲み方が分かっている人ほど、何よりも重要視していることなのです。

ワインの場合はコルクキャップを開けてからの時間で酸化がどんどん進み、それに伴い味わいが大きく変化していきます。最初渋かったり酸っぱかったりするだけのワイン、甘みを感じず、味に膨らみがないものが、時間と共に、渋味・酸味が穏やかになり、口当たりがまろやかになり、果実の風味が出てきて香りが立ち、余韻まで複雑になっていくことがあります。

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(写真例1:左1994年、右1976年。これ位年代が古いと「熟成した」味わいと言えます。つまり、複雑でまろやか、余韻はより長くなります。ちなみに熟成すると「濃くなる」と思っている人もいますが、正確ではありません。)

もちろん時間が経ちすぎるのも禁物です。一番美味しい時、というのがあるとすれば、それを過ぎればどんどん味は落ちていきます。逆に悪い酸が出てきて酸っぱくなったり、苦味、場合によっては臭みがでてくる場合があります(決して腐ることはないのでご安心を)。

ですので同じワインを飲んでいても、いつのワインなのかによって、味が全然違うということもあり得ます。

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(図は熟成のイメージ。右が時間経過、グラフの高いところがおいしいポイントですが、頂点を過ぎると落ちる一方なので注意が必要)

次に大切な温度ですが、これもワインの場合大体6、7度から15、16度ぐらいで味わうのが良いとされています。逆に言うとこの温度帯の中で温度を変えて楽しむことができるのですが、それぞれのワインによって得意な温度帯、美味しくなる温度というのがあります。

例えばフレッシュであまり複雑でない白ワインは、冷蔵庫から出したては冷たすぎるものの、その少し上7、8度ぐらいでもいいかもしれません。逆に複雑で重たい赤ワインは、冷やすと渋いだけで味がしません。大きなグラスで15、16度まで温度を上げると香り、味の複雑さ、まろやかさが出てくるので、冷やしすぎないことが重要です。

よくシャンパーニュを冷蔵庫から出したて、よく冷えた状態で飲んでいる人がいますが、あれは一番もったいない!!シャンパーニュとは複雑さ、厚みを味わう「スパークリングワイン」です。それが要らないのなら、安くてお手軽なスパークリングワインで充分。シャンパーニュこそ8-11度、少し冷たさを感じにくい温度ぐらいが丁度良いのです。

温度↑ : 香り、フルーティーさ、アルコール感 ↑

温度↓ : 固さ、フレッシュ感、渋み、キレ ↑

 

「日本酒をおいしく飲む秘訣」

一方日本酒は、ワインと比べてアルコールの高さもあり(開けてからは)酸化のスピードが緩やかですので、最重要はやはり温度です。米と水が原料、世界でも稀有な形態の国酒、日本酒は5度位の冷えた状態から55-60度の「飛び切り燗」という熱々の状態まで楽しむことができます。これだけ広い温度帯で楽しめるお酒のカテゴリーは、世界中どこを見渡してもほとんどありません。

ただお察しの通り、日本酒の中にもいろんな種類がありますので、それぞれ個別に見ていけば、ワインと同じように得意な温度帯がありますので、5度から65度の広い温度帯の中から最適な温度帯、又はそれぞれの食事に合わせ、合う温度を探していく必要があります。

一般的に日本酒は冷やすと爽やかさ、酸味、キレがまします。一方温度を上げるとまろやかさ、アルコール感、複雑味が増します(基本は上記のワインと一緒です)。

よく言われるのは「大吟醸は冷やしめ、吟醸は冷酒から冷やに、(日本酒では常温を冷やと呼びます)山廃、生酛、原酒、雄町などの酒米を使ったものは温度が高め」と言われています。ただこれも昨今の日本酒の多様化で必ずしもその限りとは言えません。大吟醸でも厚みがある場合は冷やぐらいまでは大丈夫ですし、純米吟醸に至ってはぬる燗でおいしいものも増えてきています。

 

「誰でも日本酒のおいしい温度が判る比較方法」

さて理屈はわかったところで、「その美味しくなるタイミング、温度、どう知ればよいの?」という質問が出てきそうですね。これは知識、経験が無い方でもご自宅で簡単に試してもらうことができます。

日本酒の温度の違いから。まず日本酒を用意します。この場合やや温度帯が広い雄町を使った純米吟醸か特別純米、原酒と書かれたものなどがより良いでしょう。他に自宅にある銘柄でほぼ問題ありませんが、ただ後にも述べます通り、生酒・生詰めと書いてあるものだけは避けたほうが良いです。

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(写真例2:温度を変えて比べるのに適したお酒のイメージ。「生」でなければだいたい大丈夫です。)

日本酒が用意できたらまず冷蔵庫で冷やした状態そのままを、出来る限りワイングラスに注いでください。昨今のモダンで華やか、フルーティーな日本酒は是非ワイングラスで!同じ位の量を今度は徳利に入れます。ポットのお湯を鍋に移して、別にお湯の半分の量の水を加えて、そこに徳利を入れます。温度のイメージは60から65度。3分ぐらいつけておくと、冷蔵庫から出したての日本酒でも適度なぬる燗に早変わりします。面倒な場合は電子レンジで40秒ぐらいでも構いません。

ただしどのような温め方でもぜひ一手間を!徳利をもう一つ用意しておいてそちらに移し替えてから注いでください。何故かというと急速に温めると、どうしてもお酒の中で温度ムラができますので、混ぜることによってそれを均一化させることができるのです。一般的なおちょこや片口に入れてワイングラスの冷酒と飲み比べてみてください。驚くほど味や舌触りに違いがあることに気づくでしょう。香りも全然違いますよね。

ただこれで終わりではなく、さらに時間をかけると冷酒は室温までぬるく、ぬる燗は冷めてきますので、そこまで飲み比べてください。そこでお好み最適温度がぴたりとわかります。

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(写真例3:温度を変えて楽しむには、やはり酒器はいくつかあったほうが良いです。高価である必要はありませんので。)

 

「誰でもワインのおいしい飲み頃が判る比較方法」

一方ワインの飲み頃です。これもコルク・キャップを開けてから少しずつ飲んでいき、一番おいしいタイミングを探せば良いのですが、経験がない人で「飲んでるうちに分からなくなる」「タイミングが掴みづらい」という人もいらっしゃるでしょう。そこでお勧めしたい方法です。

同じワインを2本買います。予算が限られている場合はフルボトルでなくてハーフボトルで充分です。同時に開けずに初日は片方だけ少し飲んでください。この時点では本当の味、飲み頃はまだわかりません。1日か2日おいて、もう一本を開けて飲んでください。この時点で開けたての味、と1、2日経った味を飲み比べることができます。どちらが美味しいでしょうか?正解は私のようなプロが押し付けるものではなく、それぞれ飲み手の方の舌にかかっています。素直により美味しいと思えるほうが正解の飲み頃です。

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(写真例3:どうしても揃わなければ、似たようなワイン2本でも可。しかしヴィンテージ=年は必ず一緒にしましょう。)

ただ、まだこれで終わりではありません。さらに翌日、翌々日も同様に試してください。2本目を開けて2日目の時点で、開けてから2日のワインと3 、4日のワインを比べることができます。これなら誰でも簡単にワインを開けてから、1,2,3,4日目の味の中で、ご自身の好みがどのタイミングなのか、知ることができます。同じような比較を別のワインで2、3度やればそれで経験としては充分、あなたも立派な「ワインのタイミングマスター」つまり最もワインを美味しく飲める人なのです!!これはどんな産地、品種、銘柄を覚えることよりも大切なことなのです。

 

「初心者が買ってはいけない日本酒」

さて美味しく飲むためには買い方も重要ですよね。上に書いた事を踏まえてどのようなものを買えばよいのか、逆に買ってはいけないのかを見ていきましょう。

まずは日本酒から。昨今の日本酒専門店であれば安心して買えるお店が多いのですが一般的な量販店などでは懸念されることもあります。それが今度管理です。先程美味しく飲むには温度の変化が重要と申し上げましたね。つまり一定以上に温度を上げてはいけないお酒があるわけです。

実は日本酒の温度管理はワイン以上に神経質で、ワインよりもさらに冷やした状態でないと劣化の対象となります。劣化と熟成は紙一重、ワインほど酸やミネラルのない日本酒は空けてからの酸化は緩やかなもの、開けるまでの瓶の中での酸化、熟成はワインよりも早く進んでしまいます。こだわりの日本酒通はマイナス5度の専用保存クーラーを持っているほどです。

つまり買ってはいけない日本酒とは「生」と書いてあったり大吟醸であるにも関わらず、常温で売られているもの、ということです。基本的に純米酒吟醸と書いてあるものでも冷蔵庫に入れておいてもらいたいものです。もちろんお店で神経質にしてもお家に帰られてからも重要で、夏の常温保管はもってのほかです。冬の室内も暖房がかかりますよね?ワインももちろん、日本酒も1年通して常温保管は避けていただきたいところです。

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(写真例4:たとえ有名銘柄でも、冷ケースに入っていないものは買うのはNG)

最近はBYと言って、日本酒の製造年、場合によっては月を書いてあることがほとんどですので、小さな町の酒屋さんなどで、これがあまりにも古い2年前のものなどは「買ってはいけないもの」に含まれます。

 

「初心者が買ってはいけないワイン」

一方ワインはどうでしょうか?上記の日本酒の「買ってはいけない」条件と同じで、常温であったり保管がずさんな、またはほこりをかぶったところではなるべく買いたくないものです。しかしそれ以上に重要なことがあります。

皆さんボージョレヌーボーって飲まれたことありますか?二度三度飲まれたことがある方なら分かると思いますが、おいしいこともあれば酸っぱくてあまり味がしない、なんて経験ありませんか?上にも書きました通り、ワインは造ってから、または空けてからの時間が飲みごろの決め手です。つまり早すぎるものは開けるのが禁物ということです。

よくこの話をすると熟成の問題と勘違いされますが、ここで言いたいのは、「移動によるストレスのお話」と考えてください。実はお店から袋に下げておうちに持って帰ってくるだけでも、ワインには「ストレス」がかかります。全く同じワインで、買って1週間のものと、当日買って持って帰ってきたものを飲み比べた人もいます。どちらが美味しいか?当然1週間前から置いておいた方です。

もうお分かりでしょうか。買ってはいけないワイン、それはずばり「新商品、新着、新ヴィンテージ」なのです!!なぜなら、ほぼ全てのワインは船で4ヶ月揺られてくるので、到着直後はそのストレスが取れない状態なのです!

お店で「新」と書いてある、またはも見たことがない商品だと思わず手にとって買ってしまいたくなりませんか?これ、その日に飲んでもおいしくないことが結構多いです。買ってしまったら、出来ればご自宅のセラーで3から6ヶ月は最低落ち着かせてください。熟成のためではありません「ストレス」を取るためです。今日飲みたい、うちにあったら直ぐに開けてしまう、という人にとっては新しいワインは「かってはいけない」ワインです。

そのためにも日ごろから同じお店、信頼できるお店を探し、そのラインナップをチェックした方が美味しく飲める達人というわけです。店員が正直な人なら聞いてみましょう。「入荷して3から6カ月ぐらいたったワインはどれですか?入り立てのは勧めないでください。」

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いかがでしたか?今日から使える裏技、ご存じなかった意外な知識があったのではないでしょうか?繰り返しますが、銘柄、産地、品種や酒米を覚える前に、こういった飲み方、買い方の方がよっぽど重要です。そしてそれを販売する側のプロ、業界のソムリエ、流通、蔵の人もほとんど教えてくれないのが現状です。これはとてもとても大事なことなので、ぜひご家族、お知り合い、お友達にも教えてあげてください。

ワイン日本酒の買い方については今日は飲み方に関わることだけで、また日を改めて詳しく説明させていただきます。