20の蔵が集合、佐賀のお酒を心行くまで比較できる「佐賀の地酒 きき酒会」に伺ったレポートです。
以前から佐賀のお酒は「やや甘め」とは聞いていましたが、天吹さんのお酒以外あまり試したことが無かったので、その個性にはびっくりしました。
基本的には「甘め、たっぷり、クラシカル」な酒が多め。クラシカル言えば聞こえがいいですが、後味にやや苦味、雑味を感じるものも散見され、それが多いと、最近の透明感のあるモダン酒しか飲んでこなかった編集長には、やや苦手な部分も感じました。しかし中には、ちょっと違った個性をもったもの、透明感、伸びも持ったもの、苦味はあるけどそれを適度にしうまく活かしているものもあり、嬉しい発見も多くありました。
コメントは試飲順、ただし「松浦一酒造」の方には、蔵に伺ったかのような丁寧な造りの説明を頂いたので、あえて最後に回してあります。
<天山酒造 七田>
純米吟醸:バナナのような香味、とろみがあり、透明感クセのない伸びのある酒質です。
七割五分磨き:カカオのような香ばしい香味、こっくりとした味わいで旨味と酸のバランスが心地よい一本です。
<樋渡酒造場 万里長>
純米:香はセメダインのような風味が強く、口当たりは穏やか。後半苦味がやや強めに出ます。
<同上 大洋潮 (タイヨウチョウ)>
原酒:とろみがありやや風味が荒い。燗酒向きの味わい。
<大和酒造 肥前杜氏>
吟醸:米の蒸した香り、穏やかさ細やかな旨味、コクがあり、余韻には微妙に雑味があります。
大吟醸:ワインっぽいハーブの様なアロマがあり、米味に深み、幅と辛味があります。余韻は華やかで、葉ワサビのようなタッチもあります。
<矢野酒造 肥前蔵心>
生酛純米:ほっこりとして旨み、幅があります。やや広がりがあり、まとまり、綺麗な酒質です。薄すぎず良い幅があるといえます。
純米吟醸 山田錦:メロンような香り。すっきりとして華やか。さらりとした口当たり、奥のほうに辛味があり、後口のキレへとつながります。
純米大吟醸 権右衛門:ピュアでじわじわと旨みが広がり、繊細ですっきりとしています。細やかな旨味で、飲み心地良く、夏にもオススメできるでしょう。
<天吹酒造 天吹>
純米吟醸 いちご酵母:イチゴの種のような風味、実の部分の香りも若干。甘やかで、トロットした口当たりながらキレもあり、後半はやや辛さも感じます。余韻にもいちごの風味ははっきりと残ります。
純米吟醸 壽限無 生:メロンや桃のようなアロマ、透明感があり、花のような風味。桃の様な繊細でやわらかい甘みのタッチが味わいにも表れています。
<東鶴酒造 東鶴>
純米吟醸:華やかでマスカットのような香り。少しとろみがあり爽やか。繊細な味わいです。
特別純米:セメント香やメロンやパイン、マンゴーなど香りが複雑です。雑味も少しありますが、全体のバランス良く、楽しめると思います。
純米大吟醸:華やかで細やか、やや細い印象あり、余韻まできれいに伸びます。繊細な味わいの白身のお造りに。
<古伊万里酒造 前(サキ)>
純米吟醸:幅、コク、旨味があります。この蔵らしいとろみ、他との味の差別化が見て取れます。
大吟醸:細やかでスパイスのようなアクセントがあります。とろみ、旨み、まろやかさがあり、主張がしっかりとし、奥 にやや辛さを感じます。
純米:ややこくがあり、酒質が全体に重い印象。燗酒にして開かせ華やかさ、旨味を味わいたいところです。
<窓の梅酒造 文左衛門>
特別純米 文左衛門:セメダイン香にややコク、苦味があります。全体的に荒い印象。
純米吟醸 文左衛門:伸びやかでうまみ幅があり、やや厚みがあります。微細に潮っぽい風味やスモーク感があるので、香ばしい風味もあります。魚や明太子のようなものに合うのかもしれません。全体的にバラついた印象。
大吟醸 文左衛門:雑味、くさみ、荒さがあり、米を削った良さがあまり出ていないように思います。
<馬場酒造場 能古見>
純米吟醸:さらりとして旨みがじわじわと広がります。奥に適度なコクがあります。
純米吟醸:米の風味が強調され、やや燗に向いた酒かもしれません。旨味と苦味がくっついています。
中取り生:ややセメダイン香があり、とろみ、旨み穏やか。後口には少しの雑味と共に香ばしさを感じます。
<光武酒造場 光武>
手造り純米:さらりとした酒質にとろみやコクもあります。後味に雑味がありますが、抜ける香り、米の甘さも感じます。
<鳴滝酒造 瀧>
純米吟醸 生:口当たりサラリとしてのちとろみがあり、ストレートな分、後半雑味が気になります。
特別純米 フリーラン:やや甘みがあり、穏やか。甘みと酸味がくっつき、やや軽い苦味も後半は心地よい苦味、ややコクも。
純米吟醸 フリーラン:香りに透明感があ、り葡萄のような香り米の旨味と香ばしさがあり、焼き目をつけたものに合わせやすいと思います。バランスに優れた美酒です。
(フリーランとはワイン醸造用語で、この場合もろみの、強く圧をかける前、自然に出てくる雑味のない部分、またはそれを用いたもの。マスカット風味がし気がしましたが、あくまでワイン酵母は使ってないとの事。)
<小松酒造 万齢>
純米吟醸:ほのかな甘み旨味ととろみ、後半の雑味があります。
宗政酒造 宗政
特別純米:穏やかですっきりとして、後ほっこりとしたタッチ。飾らない潔さを感じます。
純米吟醸-15:口当たりが甘く、後半やや酸と苦みを感じます。
はなMunemasa-15:穏やかでクリーン、ほの甘い。ただ、旨みも伴い、やや洋食向きの酒です。甘さもくどくはありません。
<基峰鶴>
純米吟醸 雄町:とろみ、幅バランスがあり、重みはあるが後半辛味もあり。
純米吟醸 雄町 生:とろみ、旨みあり、バランスが良い。ジンジャーのような風味もあります。
rakes レイクス 純米吟醸:メロン、柚子やジンジャーのような風味、伸びよりもゆったりまったりとした後味におもゆのようなとろみ、粘性を感じます。
<松浦一酒造 松浦一>
純米:現状の冷では固く苦い味わいが支配的。まだ開いていないのか、燗酒飲んだほうが良さそうです。ただ今回の他で味を見た佐賀の酒にない、しっかりとした個性が出ていました。
純米大吟醸:麦わらのような香りで、口当たりすっと入ります。やや甘さと軽い苦味があり、後半にアルコール感がやや上がる、変化と独自性を持ったお酒です。
純米吟醸 雄町:とろみ幅があり、緩やかでコクもあります。奥行きがあって表情の豊かさ楽しめるお酒です。
蔵元さんに貴重な話を聞けました。こちらの酵母は熊本の山田錦のを自家培養したものだそうで、もろみからもろみへと毎年選抜をして25本のタンクから最も優れたものを翌年に使うそうです。
どうしても焼酎のイメージが強い九州ですが、北部は優れた酒蔵も多く、また訪問したい蔵が増えた一日でした。