先日イタリア南部・カンパーニャ州の五社のワイナリーを訪問してきました。
フィアノという品種にフォーカスして訪問してみたものの、まずこの地の白ワイン全体の熟成能力の高さ、そして品種とそれからできるワインの多様性を再認識し、この地こそイタリア白ワインの代表する産地であるという認識に至りました。
一般的にはトレンティーノ・アルト・アディジェ州やフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州など北部の産地がイタリアを代表する白ワインとされています。確かにアルトアディジェなどは常に高い評価を得ていますが、そもそもこの地はドイツ語圏であり、国際品種を用いて醸造され、歴史的な意味合いにおいて、果たしてイタリアを代表する白ワイン産地と言えるでしょうか?
カンパーニャはローマ帝国の時代からポンペイをはじめとする都市のお膝元として葡萄栽培が活発に行われてきました。近年ではタウラージという南イタリアを代表する赤ワインの産地として知られているため、未だに赤ワインのイメージが強いのですが、白ぶどうの品種にフィアーノ、グレコ、コーダディヴォルペ、ファランギーナと多様性があり、また産地もアヴェッリーノを中心とした山側のイルピニア、そしてパエストゥムを中心としたチレントという海側に分かれ、それぞれ特徴のある白ワインを生み出しています。
さらにその両方の産地からわずか5千円前後のワインが、10年15年と年を重ねても、熟成感の中に鮮やかなミネラル感、緻密な酸を残し、若くそして複雑な香味を放つ素晴らしいワインが出来上がるということをまざまざと見せつけられました。
若く飲んでもフレッシュでミネラルさんに溢れ、また熟成もできるワイン、そして品種の多様性。これだけの特徴を持った産地は世界的に見ても稀有といえるでしょう。
現状では産地としてトスカーナや前述のアルトアディジェまたシチリアといった産地の影に隠れているイメージがありますが、まさしくここは世界的銘醸地であり、今後の注目次第によっては、イタリアワイン白ワインの世界を間違いなく引っ張っていく地であることは間違いありません。
因みにカンパーニャは、フランスのシャンパーニュと同じ語源で「地方、農産地」を意味します。まだまだ過小評価されていますので、シャンパーニュにも負けない人気と名声を勝ち得てもらいたいものです。
今回の訪問のレポートは、じっくり、たっぷりと記事にしていつの日か別の媒体で皆様のお目にかけたいと存じます。お楽しみに!
訪問した5社
山側(イルピニア)
チロ・ピカリエッロ
ピエトラクーパ
ヴァディアペルティ
海側(チレント)
ルイジ・マッフィーニ
サンサルバトーレ1988
文:吉良 竜哉
写真:吉良 悦子