この記事は「フロッグスリープ メーカーズセミナー」(後編)です。

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4 メルロ ラザフォード2014:エッジがややピンクがかった明るい赤。香りは青みを感じる、明るく外向的なタッチ。バラ、小粒の赤いベリー、細やかな胡椒など、豊かさと広がりがあります。アタックはややタイト、細かい酸が引き締め、後でジューシーさが広がり、プラムのような肉付きの良い果実味を感じます。このメルロはボルドーの右岸ポムロールなどを意識し、最高のものを造るという目線で、3のジンファンデルと一転して100%メルロにこだわりたいそうです。

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5 エステイト グロウン カベルネ ソーヴィニヨン ラザフォード2014:華やかで、赤めの紫。ブルーやブラックのベリー、若干、埃、土っぽさや小粒の胡椒のような香り、後で若干ミント、杉のような青いタッチも出てきます。とろみ、甘み、旨味、酸が複雑に織りなす酒質。イタリアのキャンティ・クラシコを連想させるような、熟したトマト様の、特徴的な酸のタッチであり、細マッチョな引き締まったボディを持ちます。以前別のヴィンテージを飲んだときには、もう少しカカオ、チョコレートのような風味がしましたが、よりピュアな要素が増したのでしょうか。

6ジンファンデル ナパヴァレー 1999:熟成能力を見るために、特別に持ってきていただいたワイン。全体に赤く、明るく、エッジにはわずかにオレンジがかった色合いが見られます。干しぶどう、アンズ、ベリーのジャムなどしっとりと甘い香りが立ちこめます。味わいはベリージャムの甘み、丸みを伴った果実味、チョコフレーバー。若干酸、ミネラルが穏やかに広がる、バランスに長けて飲み心地良く、いつまでも飲み続けていたいワイン。熟成の頃合が完璧であり、今年飲んだワインの中では一番良い印象。過去の数ある優れた熟成ワインの中でも、屈指の出来と言えるほどの完成度です。

ジョン氏は長いワイン造りの中で、かつては濃密、濃厚なボディを持ったワインこそが熟成に向く、と考えていたそうです。事実、業界全体にそういった認識が広がっていました。現代では逆に酸、ミネラルの中心の骨格があるワインが熟成に向くという考え方が主流ですが、彼にとっては違う少し違うそうで、「若いうちから、バランスの良い、各要素が平均化された、完成度の高いワインこそ、熟成に向く。人間と同じ、醜い人間はいつまでも醜く、美しいものはそのまま。」と説明を受けました。たしかにこのワインにはその説得力があります。そう考えると2014年をこの価格で購入し15年寝かせるだけで、これだけ完璧な熟成ワインが得られるとすれば、相当お買い得と言えるでしょう。

影響力の非常に強い(強かった)ロバート・パーカー・Jr.氏を、敵視、という表現が近いほど、セミナー中でも再三批判し、隣人の超一流生産者とも不仲が知られている様に、反骨心、独自性が強く、道教に明るいなど、確固たる信念、哲学を持った当主のジョン氏。

私自身は、パーカー氏の採点は参考程度にするものの、大して気にはしない一方、ビオワインだからという理由だけで妄信する風潮にも疑問を感じます。有機栽培イコール美味ではなく、美味なものの中に結果ビオが増えてきていると捉えるべきです。その点、このカエル印は、多くの方に奨められる、癖のないピュアな味である上に、緻密な組み立ての末に成り立つ、細やかな味わい、高い完成度を持っています。それでいて、ナパヴァレーの平均的ワインよりぐっと価格を抑えた同社のワインは、屈指の買い得品として、自信を持って扱うことの出来る逸品です。

ブドウの樹の気持ちを、初めて問われたこの日、ワインの根幹となるブドウの生育を、造り手のエゴ、生産性からでなく、全く逆の、自然視点で見られた、かけがえのない経験となりました。

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