ブルゴーニュ人気ワイナリーの1つ、ヴァンサン・フィリップ・レシュノーのヴァンサン氏が来日し、2014年の水平テイスティング(同年飲み比べ)という貴重な機会に恵まれました。
試飲では2014年の、早くからアタック(口当たり)が丸く、引っ掛かりが少なく、飲みやすい印象。ボリュームも適度にあり、全体のまとまった感じが、どのキュヴェにも感じられます。個人的にはモレ・サン・ドニが、例年バランスの取れた味わいでお勧めしやすいのですが、この当年も赤い鮮やかなタッチにミネラルをうまく取り込み、明るく外向的なイメージにまとまり、今飲んでもとてもおいしい状態です。
一方ニュイ・サン・ジョルジュの一級畑のものは肉付きが良く、逆に黒みを感じられ、丸く凝縮した果実の甘みが印象的です。ニュイ・サン・ジョルジュを拠点とすることもあり、ヴァンサン氏も一番力を入れてお勧めしているという、一級畑の中からレ・ダモード。これまたバランスよく仕上げられており、果実の密度、ある程度早くから楽しむことができる高い完成度です。数年の熟成後も非常に楽しみな一本といえます。彼の言葉からは、比較的凝縮感のあるワイン造りを念頭においていることも伺い知れます。
上記以外、ジュヴレ・シャンベルタンなどもありましたが、まだ完全なまとまりはないものの、半年、一年でこなれた印象になる予想も出来、総じて、ほぼすぐ飲みOKの2014といえます。
このワイナリーのワインは数年前、黒々とした印象があったり、年ごとに味のイメージが違うところが感じられましたが、この数年はばらつきが落ち着いてきた気がしていました。その辺をご本人に正直に伺ってみると、「収穫年の出来によって造りを大きく変えることはない。そのため出来上がったワインも年による差はある程度出るかもしれない。ただ除梗のパーセンテージは年によって違う。100パーセント除梗すると逆に(梗に吸収されないため)色濃くなる可能性がある。」というお答えを頂けました。自然に任せ、過度な介入はしない」という意味で、健全な方向性かと思われます。
「若手実力派」として高い評価を得るようになって早20年余り。ヴァンサンさんも、「いい歳のおっちゃん」感がでてきましたが、情熱を秘めつつも屈託の無い表情も、多くの人を引き付けるのでしょう。
兄弟が分割相続し、別々にワインを造ることが多いブルゴーニュにおいて、モレ・サン・ドニのドメーヌ・アルロー等と並び、兄弟が手を携え切り盛りする数少ない例。今後も楽しみなこの兄弟ワインの出来から目が離せそうにありません。
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文・写真:吉良 竜哉