日本のワイン愛好家の間で根強い人気の品種「ピノ ノワール」。近年発展目覚しい国産ワイン業界においても、その栽培の難しさから「後進」と見られている品種。そんな気難しい、憧れの品種に果敢に挑む6社の醸造家が会した座談会、「第1回 ピノノワールサミット ミーティング」にお邪魔してきました。

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こんな感じ、今回初回のイベントです。

2月12日、午前中に行われたパネルディスカッションの参加者はサッポロ(余市・工藤氏)、サントリー(津軽・渡辺氏)、メルシャン(長野・生駒氏)、といった大手3社からと高畠ワイン(山形・川邉氏)、ヴィラデスト(長野東御・小西氏)、都農ワイン(宮崎・赤尾氏)といった独立性のあるワイナリーまで、産地も社風もバラエティーに富んだ6人が、ピノノワールの栽培の難しさ、醸造工程の選択、問題点について話し合われました。

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(この記事の写真はピントが合っていない為、お見苦しいと思います。すみません。)

前半では各生産者の特徴説明のあと栽培についてのお話です。

醸造家が実際にワインを造る過程を話し合う、専門的かつマニアックな文面になってしまいますが、ワインの味の違いなどついてきっと今以上に興味を持っていただけて、為になると思います。注釈は所々つけましたので、お時間あるときにじっくりお読みください。

#A:それぞれの産地特性

まず冒頭ではそれぞれのワイナリーの特徴説明。ここでは北から醸造家名、社名に番号をつけて、混同無く、比較が出来るようにいたします。

①サッポロ・工藤氏「畑は余市中心。ピノノワールはフランスから苗を輸入した2000年頃導入開始しようとした。しかしクローンの選抜準備を行い植樹は2006年から。」(注:つまりワイナリー植樹を始めるだけでも準備に数年かかる大変な仕事だということがよくわかります)

②サントリー・渡辺氏「畑は青森県津軽。90%契約栽培農家からのぶどう。樹が比較的古い(樹齢が高い)。9月の最低気温14度位とピノノワールとしては理想的な温度帯。津軽地方は比較的ゆっくり熟すピノの適地。」

③高畠・川邉氏「(少なくても現在申告されている)山形のピノノワールのほとんどを自社で醸造。北のイメージがあるが、産地としては(温度でみると)フランス・ローヌにあたる。収穫も比較的早め。酸が落ちないように留意。垣根仕立て、ボアテックス(工業用シート)を使用、一部ハウスも使用。スパークリングに使う為に。2年前から密閉タンクで醸造開始。クローン選抜でさらに改良を目指す。」

④メルシャン・生駒氏「産地は長野県高山村。100%契約栽培のぶどうから佐藤明慶氏の畑。1980年台から千曲川左岸で栽培開始。標高の高い所での栽培を目指すためかつての千曲川左岸の畑から右岸の畑にシフト600m。秋雨があるので9月初旬から中旬に収穫する。」

⑤ヴィラデスト・小西氏「ワイナリー92年に75本植えられたピノノワールをアドバイザーの意見もあって一旦全て伐採。しかし思い入れの強さから別クローンにて300本を再度植え直し。2006年初収穫。雨が少なく標高が高いため、酸度の高いピノノワールが収穫できる。」

⑥都農ワイン・赤尾氏「シャルドネ、キャンベルアーリー中心のワイナリー。スパークリングワインに使えるためピノノワールをもともと栽培。収穫時期は他よりも圧倒的に早く、芽吹きから80日で収穫する、非常に短いサイクル。果実を過熟にしないように気を使うことが大変。ピノノワールは試行錯誤の段階、まだまだこれから。シャルドネにも20年かかった。」

B:栽培の苦労、問題点(葡萄の色と、種の熟度と玉割れ)

ここからは栽培について。ピノノワールの難しさを実感する6人がお互いの栽培方法について疑問をぶつけ、それに応える形でも発言を行いました。

ここでのキーワードは「レーズン化」と「玉割れ」。「レーズン化」とは、早熟なピノノワールが夏に熟しきったかと思うと、わずか数日で酸が落ち、干し葡萄のように「過熟」になってしまうこと。「玉割れ」は逆に収穫時の雨で水ぶくれし、薄いピノノワール皮が破れてしまうことです。

① 工藤さん「6社の中では収穫時期が最も遅いが、2006年の植樹以降徐々に(年々)早まってきている。最近5年は10月中旬。この時期に拘るのは酸味を残す為。酸がないとアロマが出ないと考える。(注:収穫時期が遅れるにつれ酸度はおちます。)ちなみに同社の長野の畑は8月中旬。国内でもトップクラスで色が濃く出るが、樹齢が低くタンニンが荒いのが課題。玉割れは余市では収穫のシーズン的に少ない。」

② 渡辺さん「種が熟すのを待っての収穫を心がけている。レーズン化はしない。津軽は9月末から10月は梅雨に入るので玉割れもふくめ、あらゆる病気との闘い。」

③ 川邉さん「バランスが難しい品種。熟したあと数日でレーズン化して、放置して醸すとすると、粉っぽい、残糖が残るくらいになってしまう。猛暑だと種が熟さないこともある。種の熟度を取るよりはレーズン化を避ける。皮が厚く、畑の土壌に工業用のシート(ボアテックス)が敷いてあり、水はけの工夫をしているため、ほとんど起こらない。」

④ 生駒さん「長野の自社の葡萄にはフランソワーズの香りを感じる。夏の気温が高いと色づきが悪い。」

⑤ 小西さん「寒暖差があるので酸が出やすいが、残暑が厳しいと(寒暖差が足りず)色づきが悪くなる。標高850m。収穫時に雨が降ると玉割れしてしまう。」

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⑥赤尾さん「一番の問題点は台風来ると色づきが止まる点。火山性土壌、早熟の優位性を活かすため、8月2日から10日頃収穫。その時期だと(今までの収穫においては)台風もほぼ来ない。種が熟す前に果実が乾き2、3日で大きく変わる。放っておくとレーズン化してしまうので、種の熟度よりもレーズン化避けるために早めに収穫する。」

熟度を取ると酸が無くなる。酸度を狙って収穫すると雨が降る、等など問題は複合的なもの。写真のフォーカスの様に、一つを狙うと他を捨てなければなりません。醸造・栽培家の皆さんは、日夜その取捨選択に迫られているということが、良くわかるお話ですね。

後半に続きます

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