人間の食に対する、探求、欲というものには終わりがない。それはきっと、食べる方も作る方も。
その中で出会う、究極の形の一つとして挙げられるのが、12月初旬に伺った、フレンチレストラン「Calie(キャリエ)」さん。こちらの料理の味、食材、見栄えは、どれをとっても探求してきた「喜び」を感じられるもの、そして同じく探求する同士に是非伝えたくなるもの。そこでしっかり記しておこうと思います。
このレストランはホームページが非常に美しく、伺うのを楽しみにしていたのですが、逆にどんなお店、お料理か想像がつかず、実は少し不安にも感じておりました。
しかしそれは取り越し苦労であるということは、席について一瞬にしてわかりました。まず目を引くのがシンプルでかつ洗練された、上品な空間。隣の席との間も充分とられて、居心地のよさは抜群です。
料理は「サフィール(サファイア)」コースをいただきました。最初の一皿は「パテ・ド・カンパーニュ」。英字新聞の様な紙に包まれ、ハンバーガーのようにして出てきたパテにはうまみ、香ばしさが広がり、バンズと調和。究極の「ハンバーガー」と言えるでしょう。見た目の驚きと、しっかりした調味で最初から期待が高まります。
2つ目は「浅野さん・高さんの野菜」。10種類以上の野菜が、それぞれに調理されて盛り付けられ、一皿に集約されています。その食感、味の違い、彩りのバラエティーには驚かされます。どれ1つとして没個性のものがなく、全てが主役になれるようです。特に根菜類の歯触りは絶妙といえます。
3つ目は「白子と秋刀魚」。白子の柔らかさに、滋味深い味わいのソース、キノコの適度な歯ごたえがプラスされ、これも見事な調和を持った料理です。食感はもちろん、味付け、温度など、全体に「優しさ」を感じる一皿です。
続いて「リー・ド・ボーと蟹」の皿。この料理は口に運んだ瞬間、旨みが口いっぱいに広がり、でもそれが強すぎず、くどくなく、じわりと波のように、重層的に広がります。凝縮感と繊細さの同居する矛盾。そのハーモニーには感動すら覚えました。今まで食した料理の中で一番おいしいものだったかもしれません。それぐらいの衝撃でした。
次は「甘鯛」。前の料理の感動も冷めやらぬままでしたが、この料理も魚の身が繊細にほどけると共に、舌の上に細やかな旨味が広がります。焼き目の香ばしさ、柔らかさ等がが混ざり合い、こちらもひと口一口が心地よい料理です。
メインの前に驚きの箸休め。なんとフレンチで押し寿司です!お米はシェフのご実家千葉から取り寄せられたものだそうで、太刀魚の脂と酢飯とのハーモニーは言うまでもなく絶妙です。
そしてメインの鴨。プリッと肉々しい鴨ですが、しつこくはありません。締めを飾るのにふさわしい、飽きの来ない食べ応え、とでも言いましょうか。
ワインの事、お店の事などは後半で。
後半に続く