身の回りに情報が溢れる今日この頃、一度持ってしまったイメージが本当に正しいか確かめるのは大変ですよね?
実は有名な人、又は組織なのに、実は実態がよく知られていない、または誤解されている、なんてことは無いでしょうか?ワインの生産者にもちょくちょく見受けられる話で、今回お話しするプリュレ・ロックもそんな一つかもしれません。

昨年末、フランス・ブルゴーニュの同生産者で醸造責任者を務めるヤニック・シャンさんが来日。メーカーズランチにお招き頂いた際、私のそんな先入観も払拭できた良い機会でしたので、お伝えします。

 

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まずは、この生産者についてご存知ない方に簡単に説明しておきましょう。ロマネコンティで知られるD.R.C.社のオーナー家族2つのうち1つであり、あの天才醸造家マダム・ビーズ・ルロワさん(元D.R.C.共同経営者)の甥であるアンリ・フレデリック・ロック氏が所有する生産者です。徹底的に自然な栽培にこだわり、化学薬品の排除はもちろん、補糖、補酸も行わず、天然酵母のみ使用。自然なぶどうの風味をワインに体現することを第一義としています。ちなみにその高い知名度の割にはD.R.C.もビオディナミ(有機栽培)であることはさほど世間一般では知られていませんね。

ここではヤニックさんに伺った話を下の項目別にご説明していきます。栽培に関する考え方や近年のヴィンテージについてつっこんだ内容です。それなりのヴォリュームなので、ご興味のある話、内容からどうぞ。

1.畑名と商品名:「有名な畑のブドウを使えばみんなその名をつけたワインになる?」

2.一番印象に残ったワイン、そして中華とピノ > 後編

3.ヴィンテージの良し悪しと先入観:「私はワインの味のコメントはしない。」  > 後編

 

 

1.畑名と商品名:「有名な畑のブドウを使えばみんなその名をつけたワインになる?」

 

 

最初に供されたのは白ワインの「ヴァン・ド・ターブル・ブラン・クルー 2014」。実はこのワイン、2012,13,15など通常は「ラドワ ブラン ル クルー」と名乗れる村名格の畑のブドウを用います。この年は2010,11と同じ様に酵母の力が足りなかったためか、途中で発酵が止まったそうです。発酵が止まるということは、酵母が消化し切れなかったブドウの糖分が残ります。その残量の為、「ラドワ」の規定を満たせないので、村の名を外す、つまり格下げしてしまったそうです。一般的には、酵母を足して発酵を続ければ、問題なく「ラドワ」のワインに出来ます。しかし、導入で書きましたとおり、「培養酵母は使わない」というポリシーを優先されているのです。言うは易し、ですがこの職人気質、なかなか貫けるものではありません。

問題の解決には、茎の部分を入れた全房発酵に切り替えることで、そこについている自然酵母の力を借りるという、実に自然に忠実な方法を導入。見事2012以降は(2014除いて)本来の規定をクリアした「ラドワ」としてリリースされています。

「格下扱い」とはいえ試飲した2014年もオレンジの実やピールの風味、栗の蜂蜜のようなリッチなフルーティーさやコクを感じられる、十二分に美味なる出来でした。非常に伸びやかでいて、中心に力を感じるワインです。

 

 

畑名と商品名のお話を、ここでもう一つ。同生産者の中核をなすのはニュイサンジョルジュ1級畑の「クロ・デ・コルヴェ」(所在地はプレモー・プリッセ村)なのですが、この畑からなんと最大時には4つのワインを造り分けています。品種が別な場合を除いて、このようなことは世界的にもまれで、しかも「たった」5.2haです。

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理由としてはミルランダージュ(結実不良果)に強くこだわっているからだそうです。結実不良果という日本語は良いイメージをもてませんが、実が小さく、果肉、果汁に対して果皮、種の比率が上がる果実は、複雑味や熟成能力を高められるという発想です。ミルランダージュの果実だけで造るものしか同社のフラッグシップ(看板商品)の「クロデコルヴェ」とは名乗れません。この赤も上記の白同様、果皮、果肉だけでなく「完熟した茎」も含めて、はじめてその名にふさわしい出来になるそう。それ以外は樹齢によって「プルミエクリュVV」やただの「プルミエクリュ」「ニュイ1(2009まで)」などと名前を変えてリリースしています。

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このように、畑から収穫できる果実やそれで出来たワイン、全てをその畑の名を冠した商品にしているわけではない、とお分かり頂けるのではないでしょうか?この「自己制約」こそが、世界の超一流生産者がその評価を裏切らない所以なのです。

> 後編に続きます

 

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